では、「ごみ袋有料化による東京23区のごみ削減」「福島県浪江町における耕作放棄地問題解決に関する提案」などに取り組んでいる。また、「芸術文化と科学―音楽学」では「テーマパークの音楽的戦略について」「TikTokでバズる要因〜音楽的見地から〜」など、数値や図、データなどから音楽の成り立ちを紐解く。進め方は分野ごとに異なるが、「生徒のやりたいこと」を優先し、フィールドワークや専門家インタビュー、実験などを行いながら進める点は共通だ。生徒自らが企業や大学、団体等にアポイントを取って情報収集活動を行う例が少なくない。3学年では選択科目として「課題研究Ⅱ」を設置。「課題研究Ⅰ」で取り組んだ内容をさらに深めたい、研究成果を学会などで広く発信したいという生徒が選択している。研究テーマが進学後の学びにつながる例も少なくないという。「課題研究Ⅰ・Ⅱ」では、「教員が教える側に回ってしまうと生徒の探究を止めてしまう」(玉谷先生)と、教員は一歩引いて生徒の自走への伴走を心掛けている。そして、「なぜ?」「どういう意味?」「根拠は?」などの質問を投げかける。研究主任の沼畑早苗先生はこう話す。「私たちが『知りたい、教えて』というスタンスで質問することによって、生徒は自分たちの論理の飛躍やリサーチ不足の点に自ら気づくことができます。また、質問に答えようとすることで頭の中にあったものが言語化されます。その繰り返しのなかで、生徒の探究はどんどん深まっていく手応えがあります」3学年の総探「持続可能な社会の探究」は、「科学に問うことはできるが、科学で答えることはできない課題」を設定し、多様な立場や価値観を踏まえた最適解を見いだすことを目指してグループ探究を行う。「社会の役に立ちたいという思いの強い生徒が多いのですが、『知りたい』『面白そう』という純粋な興味・関心に基づく探究心も大切。気負わず、やりたいと思えることに取り組んでほしいと伝えています」(沼畑先生)関心のある社会課題に関するワークやアンケートを基に興味・関心の近い生徒同士のグループを編成して、リサーチと議論を繰り返しながらテーマを先鋭化。試行錯誤を経て、最終的に「お茶高において、どの分野でAIを導入すれば人間とAIの特性を最大限活用できるか」「将来の日本における遺伝子組み換えのあり方」「台湾から見る日本の同性婚」など独自性の高いテーマに到達している。 したグループは、当初、「戦争のための技術か、技術のための戦争か」という問いを設定したが、リサーチするなかで「問いが大きすぎる」と気づいた。そこで「生物兵器」の事例に焦点を当てることとしてさらに例えば「科学技術の軍事利用」に着目リサーチをするが、次の時間には「特定の兵器に焦点を当てるより、科学者や企業などの開発者に焦点を当てたほうが、元々の問いを追究できる」と方向性を修正した。このように問いの再検討を繰り返し、最終的に「軍民両用技術の防衛利用をどこまで許容するか」というテーマで成果発表を行った。「目指しているのは、調べ学習としての完成度を上げることではなく、生徒自らの気づきを探究したい課題として表出させ、課題研究の際の逡巡や思考のスパイラルなどの経験値を上げることです。それに3年間の学びの集大成として科学的な視点で社会課題に挑む図2 「持続可能な社会の探究」に役立った教科 (2022年度/複数回答)国語地理・歴史公民数学理科英語芸術保健体育家庭情報課題研究28%35%38%5%18%13%4%16%18%27%58%「課題研究Ⅰ」の地球環境科学分野でスペースコロニーに関心をもつ生徒のグループが、東京理科大学先進工学部の研究室を訪問。最先端の研究に触れ、意欲を高めた。役立った理由を見ると、単に教科学習の知識や技能をそのまま活用するだけでなく、教科学習の見方・考え方を最大限一般化して活かしていることがわかる。2023 OCT. Vol.448「課題研究Ⅰ」の生命科学分野では、恐竜類と鳥類の骨格について研究しているグループが、ダチョウの骨格や体の作りからヒントを得ようと、ダチョウの博物館を訪問。「持続可能な社会の探究」の成果としてまとめたポスターの例。50※ダウンロードサイト:リクルート進学総研>> 刊行物>> キャリアガイダンス(Vol.448)
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