キャリアガイダンスVol.449
15/64

活動自体が目的で、やりたいからやっているだけなのだ。そして、教員は生徒を信じて任せている。 「生徒が失敗しないように教員が手をかけると、生徒の本気度が下がります。やりたいことを自由にやるには責任が伴います。だから彼らも真剣に取り組み、自由だからと規範から逸脱するようなことはしません。プレゼン資料も一から生徒が作るため、拙い部分はありますが、大人が作るものよりも、思いが伝わっているように感じます」(兼田先生)教員の力や学校の名前が必要なときは、生徒から声をかけてくる。 「総探で地域の大人との交流が多いこともあり、うちの生徒たちは大人の巻き込み方がうまいのです」(勇修平先生)こうした自分たち主体の自由な活動を通じて、生徒たちはどう変わっていくのだろう。 「『人に頼れるようになった』『人から頼られるようになった』『自分の強みがわかったので、人のプロジェクトにも関われる』『好きなものを好きと言える自信がついた』などの声があがっています。自己肯定感がすごく高まっています」(勇先生) 「やってみたら案外できるということがわかるのだと思います。失敗しても誰も怒りませんし、挑戦する力がついていますね」(兼田先生)実は、みりょくゆうびん局の発端     となった全国募集の初めての説明会で、生徒たちは緊張のあまり発表をうまくできない経験をした。しかし、発表上手な他校の生徒から刺激を受けて、翌年はダンボールでポストを作って目立ってみたり、人気校の説明会に来た人を出待ちしてティッシュ配布をしたりと自分たちにできる精一杯の工夫を施して、他校の生徒に「すごい」と言わしめた。 「失敗しても教員が口出しせず、信頼して待てばよいことを、生徒たちから学びました」(兼田先生)任された環境で自由に日々挑戦できるという〝余白〟を手に入れた生徒たち。一人ではできない活動は友人や大人とつながったり、失敗を恐れずに挑戦し続けたりという、自分だけの時間の使い方で、新たな自分を発見していくようだ。活動を通して自分を知り自己肯定感が高まっていく余白が生む未来 本校を取り上げたテレビ番組で、先輩たちがキラキラして見えて、地域活動にも興味があり、大阪から来ました。でも、うまくいかないことが多くて悩んだ時期もあります。プレゼンを頼まれたりしてもやりたくなくて、2年生のときに大阪に1週間帰ったんです。そのとき、自分は地域じゃなくて、人と何かをすることが好きなんだと気づきました。いろいろなプロジェクトを経験して、格段に相手のことを考えるようになりました。あるイベントで、地域魅力化コーディネーターの方々のプレゼンを目の当たりにしたときに、「私は誰に向かってプレゼンしていたのだろう」と。対象をちゃんと考える広報を学びたいと真剣に考えるようになりました。内定している大学で、すべてのものに価値を見出し、独自の発想を実現できる人間になれるよう学び続けたいです。 最近では「広島空港キャンプ」と「O7(オーセブン)サミット」という学生の集まりを企画・実践しました。「空港キャンプ」は広島空港が生徒向けに主催するプロポーザルで最優秀賞をいただきました。自分たちが「空港でお泊まりしてみたい」という気持ちから、空港と大崎上島の魅力を伝えられるように、キャンプ形式のイベントを考え、実践しました。「O7サミット」は、自分が若者の社会参画に興味があり、人が話しやすい場をつくることに興味をもった友人と一緒に立ち上げた企画。大崎上島にある学校や地域の人が集って「島の交流の場を増やす」をテーマに語り合いました。企画を立てるまでに、友人と何度も語り合い、お互いを知る時間が貴重な体験でした。価値観が違っても尊重し合いとことん話す、最短距離よりも回り道をしたことに価値があったと感じています。(写真右)生徒事例の藤後めぐさんが運営した「海星マルシェ」。ジビエカレーを作るプロジェクトなど、仲間の活動と地元の人をつなげるサポートと、広報活動を行った。(写真左)中島陽菜さんが実践した「広島空港キャンプ」。空港と大崎上島の魅力を伝えるイベントを友人と企画し、広島空港プロポーザル大会で最優秀賞をとり実現した。2024 JAN. Vol.449余白とは、チャレンジしてみる心が育つこと。■学校データ1919年創立/生徒数97名(男子43名、女子54名)、全日制課程普通科。少子化により統廃合の危機に瀕した際、高校魅力化プロジェクトを立ち上げ、全国から生徒募集を開始。多様なプロジェクト活動が盛んで、地域と一体となって、生徒の学びや生活を支えている。「旅する櫂伝馬」という、大崎上島から宮島まで向かう学校行事に生徒が参加し、みりょくゆうびん局がSNSで発信。多数の活動を「やってみた」生徒たちいろいろな経験を通じて、自分への気づきを得た藤後めぐさん(3年生)最短距離より回り道することに価値がある中島陽菜さん(2年生)15

元のページ  ../index.html#15

このブックを見る