キャリアガイダンスVol.449
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建築の世界では通常、設計と施工は分業で行われる。両者の関係は契約に基づくため、図面通りに施工されなければ契約違反と見なされる。このため、現場の施工過程で新たな発想が生じたとしても、その段階で図面を大きく変えることは難しい。かつて造船業で栄え、今はアートの町として再生を目指す大阪市南部の北加賀屋の工場跡にアトリエを構える「ドットアーキテクツ」という設計事務所が、設計だけではなく施工まで請け負うことが多いのは、図面通りに完成させることがゴールではないと考えているからだ。代表の家成俊勝さんは話す。 「施工のプロセスにおいて、建物に関係する多くの人たちから出てくる、『こうしたらいいのでは』といった意見に応じて柔軟にゴールを変えていきます。ゴールとはあくまで、ある時点で仮決めしたものであり、書き換えていくものだと考えています」建物の主役は、建築家ではない。そうした思想は社名にも表れている。 「設計関係の事務所って、××設計事務所のように個人の名を屋号とすることが多いんです。でも建築とは使い手を含む関わったすべての人のもの。ドット=『.』という単語を使っているのは、ごく小さな点の周りに、さまざまな人たちが関わってくる余白を大きくとっておきたいからです」建築家はアーティストとは違う、と家成さん。作り手の研ぎ澄まされた感覚だけではなく、使い手が自由に空間を使える余地を残すことも、ドットアーキテクツの設計における基本的な考え方だ。その点、集合住宅における似たような間取りや配列は、効率的ではあるが使い手の想像力を阻んでいることが多い。「テレビはここ、ソファはここ」と、あらかじめ使い方が規定されているのだ。家成さん自身、物件選びの際、そのことを実感した結果、古い長屋に居を構えた経験がある。 「長屋だって、江戸自体から続く規格化された型には違いありません。けれど、障子と襖の開け閉めによって空間はかなり流動的になるため、株式会社ドットアーキテクツ (一級建築士事務所)使う人次第で、ある部屋が客間や居間や寝室にもなるわけです」自分ではない誰かによって使い方を規定されることは、メンタルにも影響を与えかねない。 「多くの人は電車が遅延したり、モノが壊れたりするとイライラするも図面通りに完成させることがゴールではない。使い手が自由に空間を使える余地を残す自分の介在する余地の有無がメンタルにも影響する瀬戸内国際芸術祭2016では、資材調達のため、敷地の裏山の所有者と一緒に木を切り倒しに。その後、海辺まで運び、皮を剥ぎ、杭になるよう削りだした。取材・文/堀水潤一 撮影/松本紀子(18ページ上)      2024 JAN. Vol.44918「働く」の余白事例

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