キャリアガイダンスVol.449
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がしたい」という思いが芽生えて、「発酵」そのもの、そして味噌や2年目の秋に退職。フードコーディネーターの資格を取得した後、料理研究家のアシスタントとして働き始めましたが、未熟だった私は怒られてばかり。収入面もなかなか厳しく、3カ月でアシスタント業を辞めることになりました。立て続けに一度決めた進路から撤退することとなり「何事も続かず、私は逃げてばかりなのではないか」と自信を失いました。ただ、何から逃げたとしても、自分からは絶対に逃げられない。それなら世間の「こうあるべき」という働き方像にとらわれず、自分らしくいられる生き方や働き方を模索しよう。そう考えていたころ、日本酒のPR活動をしている方との出会いから、日本酒のネット番組に出演することに。全国各地の酒蔵を取材するうちに、日本酒のもつ奥深さに気づき始めました。日本酒の原料は米、米麹、水とシンプルです。しかし、麹菌や酵母菌の力で、まるで生きも卒で素材系の専門商社に入社したものの「料理に関わる仕事ののように育ち、多種多様な味わいを生みます。次第に私の関心は、見えない菌の力を用いた醤油といった発酵食の世界へと移っていきました。もともとは気候や風土など、制約のある環境下で、その季節にしか頂けない旬の食材を長期間にわたり食べられるように生まれた発酵食。ぬか漬けやキムチ、味噌など、最近では手作り発酵食品もブームになっています。ただし菌は生きものです。なかなか思い通りにはなりません。私自身、軽い気持ちで甘酒を作ってみたら、温度管理のミスで大失敗、なんて経験もしました。手間も時間もかかるのに、やってみないとどうなるかわからない。そんな気難しさと奥深さに、私は惹かれていったのです。そういえば小豆島にあるヤマ        ロク醤油の蔵元を見学したとき、こんな話を聞きました。同じ作り方をしていても、醤油を仕込む桶によって味の個性が微妙に変わる。蔵の奥にあって誰にも見られない桶より、人がよく覗く桶のほうがおいしく仕上がることもあるのだそうです。不思議ですよね。科学ですべてを解明しきれない余地が発酵にはあるのだなと感じます。知れば知るほど、手間と時間をかけて見守り、自分だけの味を育てていく発酵食には、効率やスピードが優先され、確実な結果が求められる現代とは逆行する価値観が秘められているように思えました。これが暮らしの余白だと。その余白を慈しんでいくことこそ、私が私らしくいられる生き方・働き方であるように感じられました。2018年ごろから発酵を軸に料理家として活動するようになり、2022年には『発酵室よはく』を屋号に。季節の仕込みものを作る手仕事会も始めました。2023年4月には京都に移住。四季の移ろいを肌で感じ、味わいながら、その時季にしか手に入らない食材を使って発酵食を仕込む。心に余裕がないときも、下処理をしたりかき混ぜたりと手を動かしているうちに、少しゆとりが戻ってくるような感覚になる。こんな日々の過ごし方が、とても自分らしいような気がしています。私のキャリアには目標に向かって一直線に道を進む、というような一貫性や計画性がありません。新卒で入った会社をすぐ辞めて、アシスタント業も続かない。それでも何かしら動き続けている間に、偽りない自分の感覚にしっくりくるような、発酵の世界へとたどり着きました。しかし、行き当たりばったりのキャリアが、振り返ってみると数珠つなぎのようにつながり、すべてに意味があるように見えるから不思議です。それはひょっとしたら、「自分から逃げない」、つまり自分の感覚を置き去りにせず、自分の興味が向くこと、これなら私もがんばれそうだと思うことを選んできたからなのかもしれません。現代は何もかものスピードが早く、人生にも正解らしきものがあるように錯覚をしがちです。それでも、本来、それぞれの人生はじっくり時間をかけて向き合い「醸していく」もののはず。結果や価値が早くわかるものに飛びつくのではなく、本来そこにあるはずの余白を守っていくことで、キャリアにも暮らしにも、自分らしい味が出てくるのかなと思います。余白が生む未来272024 JAN. Vol.449そこにあるはずの余白を守ること。あえてつくろうとしなくてもいい。効率重視とは逆行する発酵食のように人生もじっくり向き合い「醸す」もの

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