2023年夏、富士五湖の一つ、河口湖畔の美術館に30人の学生が集まった。21世紀アカデメイア(後述)傘下の全国4地区18校の2年生、約5000人から選ばれた学生だ。事前のオンライン会議を通じて知った顔とはいえ、実際に会うのはこの日が初めて。国籍も地域も専門分野も違う30人が6チームに分かれ、3日間かけて「富士五湖地域を活性化するためのアートを活用したビジネスプラン」を競い合った。発表自体も、それぞれユニークだったが、教職員の心に響いたのは、「2位になって悔しい」と涙を流す学生たちの志や意欲の高さであった。そして、すべての活動において個人やチーム単位でリフレクションの機会を設け、反省と内省を促したことが、学生たちの成長を後押しした。五湖サミット」。今年度、対外名称を21世紀アカデメイアと改めたAdachi学園グループが全校に導入した革新的な教育メソッド「セブン・ステップ・カリキュラム」の頂点に位置するイベントだ。改革のリーダーシップをとるのは田坂広志学長。世界経済フォーラム(ダボス会議)専門家会議の元メンバーで、8000人の経営者やリーダーが集う田坂塾の塾長でもある。田坂学長を動かすのは、現在の教育への危機感だ。人工知能革命によって、人材に求められる条件が劇的に変わる時代を見据え、こう語る。「これまでは、知識の修得力や論理的思考力に優れた学生が社会で求められてきました。しかし、そうした人材が職場でリーダーシップを発揮できるとは限りません。勉強ができる人材と実社会で活躍できる人材の条件はまったく違うからです。その条件の違いを理解できないため、職場で活躍できない高学歴人材が極めて多いのです」要な能力は次の5つに分類される。①基礎的能力(集中力、持続力)/②学歴的能力(知識の修得力、論理的思考力)/③職業的能力(技能の体得力、感覚的判断力)/④対人的能力(想像力、推察力、共感力)/⑤組織的能力(リーダーシップ力、マネジメント力)一回目となるこのイベントの名は「富士田坂学長によると、社会人として必従来の偏差値教育では①②に優れた人材が評価されてきたが、この能力はAIに置き換わっていくと言う。「いまや物知りであることは褒め言葉ではありません。理路整然と語ることや論理的な文章を書く能力も、既にAIの得意とするところです」従って、AIに淘汰されないためには、③④⑤の能力を磨く必要があるが、専門学校は③には強みがあるので、21世紀アカデメイアは、さらに④⑤の力である「5つのプロフェッショナル力」と「5つの人間関係力」(図)を教えようとしている。田坂学長は話す。「これから人類は、多くの困難に直面します。若い世代には、志と叡智、プロフェッショナル力や人間関係力によって、それを超えてほしい。だから、AIに不安を覚えるのではなく、人間本来の高度な能力が発揮できることにワクワクしてほしい。それこそ、真に社会で活躍できる人材だと思います」富士五湖へと続く全国18のアカデミーでの学び332024 JAN. Vol.449 ※田坂学長のインタビューは39ページにも掲載されています。取材・文/堀水潤一
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