本来は親子で対話しながら、生徒自身が自分のもっている課題意識や、社会とどのように関わりたいかの思いを親に伝えていけるのが理想です。でも、残念ながら、そのような対話の機会を、なかなかもてない家庭も多いですね。だから、高3を担任していると「成年年齢が18歳に引き下げられて良かったな」と思うことも、時々あります。と少し心理的な距離ができるのか、良い変化を遂げる生徒もいるんです。親と進路の話がまったくできないほど、親子関係が悪化していた生徒が、18歳になったのを境に、三者面談などでも親に向かって自分の意見をはっきりと言えるようになったことがありました。「成人になるということは、親の同意がなくても、自分の意思で進学や就職の決定ができるんだよ」と以前話したことがあったので、それを覚えていたのかもしれません。法律に背中を押されるようにして、親との間に適切な距離ができて、生徒自身の自立心が育まれているのですね。生徒が「親は親。自分の進路は、自分で決めていいんだ」と気づくと、対等な対話ができるようになっていくのでしょう。精神面で親から自立できると、自然と、親が言う世間や社会の「外」に広がっている世界にアンテナが向く。そうやって自分と、今の社会とのつながり方を考えている生徒は、おのずと自分の真の興味関心や、適性に合った進路を選んでいるような気がします。(気づき③▼校の進路選択のスケジュールが改善できれば、もっと時間をかけて世の中に目を向けさせられるのに、とやりきれない思いも強いです。偏差値を重視しすぎる従来の進路指導そのものを見直していかなければ。課題が山積みです。とにかく時間が足りない、十分に対話しきれないという焦燥感が…。向き合って話すだけが対話ではありません。私自身、カウンセリングをしていて「もっと時間があれば」と思うことはあります。それでも最後は「やれることはやった。あとは、きっと自分の力で乗り越えられるはずだ」と祈るようにして手を離す。きっと面談以外でも、大浦先生はたくさん生徒に働きかけをされていらっしゃるはずです。これからも、生徒の受け取る力を信じてあげてください。 )でも…正直、学いろんな生徒の話をしているうちに、みずから深く考えて、進路を決めていく生徒たちにはどんな共通点があるか、私なりの考えが言語化できました。視野を広げて、社会で起きている出来事や課題に目が向くと、自分と社会との「つながり方」を考えるようになっていくのだろうと。 「親が、この職業に就くと良いと言ったから」と話す生徒が挙げる職業はほぼ決まっていて、医師、看護師、教師、弁護士などの国家資格や公務員ばかり。昔なら安泰と言われたかもしれませんが、本人が深く考えもせず、やる気や適性がない状態では、希望する大学や学部に入れたとしても続かないのでは?と、もどかしく思っていました。今回、三川先生とお話しして、生徒自身が社会とつながることが非常に大事だと実感しました。ニュースの共有が、その一助になっていたのは嬉しかったです。逆に言うと、自分の世界に閉じこもっていて、社会から取り残されている生徒は、親が言うことを素直に聞いて、まるで自分の考えのように錯覚してしまうことがある。そんな状態に陥っている生徒に、今の社会を知る糸口を与えるのは私たち教員の仕事だなと。同時に、今の時代に合わせた進路指導に改革しなければならないという思いも根強く…。もっとこうなればいいのに、と思うことは尽きませんが、変えられるところから手をつけていきたいです。三川大浦三川 どういうことでしょう?大浦18歳の誕生日を迎えるのを機に、親三川大浦三川三川先生との対話を終えて現場の先生が振り返る親の言う社会の「外」とつながる方法を考える気づき③ 変化の激しい時代だからこそ、生徒たちにはみずから深く考えて進路を選択してほしいと願っていらっしゃる大浦先生。その分「もう少し時間があれば、生徒一人ひとりと深く関われるのに」という心残りも強くおもちでしたが、一対一で向き合って話をするだけが対話ではない、とお気づきになられました。大浦先生に限らず、やることが山積みで、なかなか満足できるまで生徒と話がしきれずにもどかしく思っ372024 JAN. Vol.449本連載で三川先生と対話してくださる先生を編集協力委員のなかから募集しております。ぜひ、編集協力委員にご登録ください。詳細は66ページをご覧ください。ていらっしゃる先生方も多いかもしれません。しかし、ホームルームや授業など、一方通行に見える場面でも、生徒に問いを投げかけ、対話することはできるはずです。また大浦先生のお話のなかには、従来型の進路指導のあり方に対する厳しいご意見もありました。一見、不平や不満に見えるかもしれませんが、その言葉には先生自身の「こうあってほしい」という理想像が表れています。不平不満は、希望や期待の裏返し。生徒や保護者から不平不満が挙がったときも、言葉をそのまま受け取るのではなく、その人がうちに秘めている希望の姿や、実は期待していることとは何か、と考えてみてください。
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