キャリアガイダンスVol.449_別冊
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2取材・文/伊藤敬太郎 イラスト/ミヤザキコウヘイVol.449 別冊特集(%) 高校生や大学生が就職して社会に出たときには、当然ながら、学生時代とのギャップが生じる。社会人になる前の環境、あるいは社会人になる前にイメージしていた環境との違いにショックを受け、早期に離職してしまうというケースも少なくない。この若者の早期離職は報道などでもよく話題になるが、図1に示した通り、その要因は多様だ。 もちろん、ひどいハラスメントがある、仕事内容が明らかに自分には合わない、労働条件が苛酷すぎるといった理由で早期離職するのは必ずしも間違った選択とはいえない。実際、労働環境や仕事内容は入社したばかりの若者が変えられるものではない。しかし、図1で男性の6.0%、女性の8.5%が早期離職の要因として挙げている「人間関係」はどうだろうか。コミュニケーションは常に自分と相手があって成立するもの。だとすれば、自分のコミュニケーションを変えることで、状況を変える余地があるのではないだろうか。 以前の日本企業では、上司や先輩による一方的な命令やハラスメントが問題となることが多かった(もちろん現在でもこの問題がなくなったわけではないが)。それに対して、パワハラなどが社会問題化した現在は、上司が部下に対して強い態度をとりにくくなっている。リクルートワークス研究所の『若手をとりまく職場環境の実態検証』においても、「叱責は一度もない。パワハラにあたるかもしれないと上司が感じているのか、不思議なくらいなかった」「今どきの子には厳しくしても意味ないからね、と親戚の子どものように扱われている」といった新入社員の声が紹図1仕事の内容に興味をもてなかった能力・個性・資格を生かせなかった職場の人間関係が好ましくなかった会社の将来が不安だった給料等収入が少なかった労働時間・休日等の労働条件が悪かった結婚出産・育児介護・看護その他の個人的理由社会に出たばかりの若者が、年代の違う上司や先輩とのコミュニケーションに悩むことは以前からある問題だ。最近はハラスメント問題が顕在化し、優しい上司が増加してはいるが、それでも若者の人間関係の悩みは消えない。そんな『コミュニケーションの壁』を乗り越えるために必要なものは何なのか。高校・大学時代にどんな準備ができるのか。■ 男性 ■ 女性出所/厚生労働省「令和4年雇用動向調査結果の概況」(2023年8月)の「転職・入職者が前職を辞めた理由別割合」より、個人的理由の「20〜24歳」のデータを抜粋して編集部が作成「20〜24歳」が早期離職した理由介されている。ワークス研究所では、この状況を「ゆるい職場」と名付け、若手の成長機会が損なわれているのではないかと警鐘を鳴らす。上司や先輩が優しくなっただけでは、コミュニケーションに関する問題は解消されない。「相手の気持ちを理解できない/しない」という意味でのコミュニケーションの壁は依然として存在している。

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