キャリアガイダンスVol.449_別冊
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アサーティブわがままイエスマン皮肉自分の気持ちも伝え、相手の気持ちも尊重する相手の主張を尊重し、自分の気持ちは抑えるVol.449 別冊特集3ん。だから、アサーションによって協働して正解を探っていくことが必要なんです。言葉の意味もそうですね。自分がある思いを込めて発した言葉や句も相手は違う意味にとらえているかもしれません。だから、会話を重ねるなかで、協働して言葉の意味を生成していくことが大切なんです」 では、なぜ多くの職場でこのようなアサーティブなコミュニケーションが自然と生まれにくいのだろうか。 平木氏は人の自己表現の方法には、以下の3つのタイプがあると解説する(図3)。①自分の主張ばかりで他人を尊重しないアグレッシブ(攻撃的)タイプ、②他人の主張を優先して自分の思いを主張しないノン・アサーティブ(自己犠牲)タイプ、③自分も他人も尊重するアサーティブタイプだ。このうち、一般的には①②が多いため、放っておくと、自他尊重のバランスが崩れたコミュニケーションが起こりやすくなる。自己表現の3つのタイプ図2自分を尊重表現する表現しない図3相手の気持ちを尊重せず、一方的に自己表現するアグレッシブ(攻撃的)アサーティブ(自他尊重)ノン・アサーティブ(自己犠牲)相手を尊重代表的なコミュニケーションのタイプ そこで注目されるのが、自分も相手も尊重するコミュニケーションである「アサーション」だ。日本におけるアサーション教育・研究の第一人者であり、日本アサーション協会の代表を務める臨床心理学者の平木典子氏は、若者が感じるコミュニケーションの壁についてこう分析する。 「高校・大学を卒業して社会に出た若い人たちは、それまでの同一年齢で価値観も似通った集団から、世代も価値観も異なる多様な人たちが集まる環境に飛び込むことになります。その違いへの戸惑いは誰にでもあること。決して自分一人だけの問題ではないと考えることがまず大切です。そのうえで、わからないことについてはわからないと素直に聞けること。ここにアサーションという考え方が大きく関わってきます」 アサーションとは、前述のように自分も他者も尊重するコミュニケーションのこと。例えば、「相手の気分を害さないように言いたいことを言わない」というスタンスは、相手を尊重しているが、自分を尊重していない。また、一方的な自己主張の押し付けは、当然ながら相手を尊重していない。図2の4象限に示したように、自分と相手の尊重のバランスが崩れると、「わがまま」「皮肉」「イエスマン」に陥ってしまう。 では、これらに対してアサーションにはどのような特徴があるのだろうか。 「わかりやすく言えば、アサーションとは『私はこう思うけど、あなたはどう思う?』というコミュニケーションのことです。自分にとっての正解が相手にとっても正解であるかどうかはわかりませ

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