りは異なる発見をしていることでしょう。例えば地元の方と交わした会話の内容が心に残る子もいれば、現地の人のイントネーションや食事の味付けの違いに敏感に気づく子もいるでしょう。語り部の方の息遣いから、悲しみや悔しさを肌で感じる生徒も多いと思います。それこそが、ネットの情報や教科書の写真を通じてイメージしていた、どこかつるんとした自分の土地感覚に、ザラザラとした手触りや彩りを加えてくれるもの。そうした個々人が感じる身体性を伴ったディテールに触れることができるのも、旅の経験の価値のような気がします。個々人が感じる旅のディテールですから、受けとめ方は人によって当然異なります。そういう意味では旅とは、複数で行ったとしても、本質的には個人的な営みなのだと思います。映画『スタンド・バイ・ミー』は、ゴーディという主人公の少年の視点で語られていますが、他の3人が語るとしたら、まったく違ったストーリーになるでしょう。ただ、旅は個人的な営みだからと いって、まったく一人かというと、やは2020年6月、「旅と学びの協議会」(事務局:ANAホールディングス株式会社)という団体が発足した。旅の効用を科学的に検証し、新しい旅の価値の創出と次世代の教育プログラムの開発などを行うコンソーシアムである。参加団体は、ANAホールディングス、日本航空、JR東日本ほか、企業、り違います。一緒に旅に行く仲間がいて、旅先で見ず知らずの人たちとの出会いがあって、旅の体験を聞いてくれる家族や友人もいる。自分一人ではないということを体感することも、旅の大切な意味だと思います。教育機関、自治体など50を超える。設立のきっかけは一企業のイノベーション関連部署にあった。同協議会のキーパーソン、津田佳明さんは話す。「私はANAホールディングスに2016年に新設されたデジタル・デザイン・ラボという組織のチーフをしていました。ドローンや宇宙事業、VRや触覚技術を使った移動体験など、新事業を生み出すイノベーション創出部隊です。そこで実感したのは、イノベーションは日常のなかからは生まれにくいということ。また、幸せな精神状態でないと新しい発想を取り入れる気持ちになれないということです。スタッフも考えは同じで、典型的な非日常体験である旅がもたらす学びについてアカデミックに検証したいという要望がありました。そこで、東京学芸大学大学院の小宮山利恵子准教授を訪ね、「旅と学びを科学する」というムーブメントする検証特集旅と学び神戸女学院大学文学部総合文化学科監修の「シリーズ日常を拓く知」の5巻目。哲学、教育学、宗教学、歴史学、文学の各教員によるエッセイ、対談形式で旅の意味を探る。2024 APR. Vol.450旅と学びの協議会 理事ANAホールディングス 執行役員津田佳明さんつだ・よしあき●1992年東京大学経済学部卒業後、ANAに入社。5年間の旅行代理店セールスを経て、1997年営業本部に。航空運賃自由化、ダイレクト販売推進など、新たなビジネスモデルの創造に参画。2016年デジタル・デザイン・ラボチーフディレクター。2020年経営企画部長。2023年より未来創造室長。『旅する』神戸女学院大学文学部総合文化学科 監修桐生裕子 編/世界思想社19旅旅と学びを
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