キャリアガイダンスVol.450
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堤先生は、歴史が好きで社会科の教師になったが、当初は歴史学習に携わることに、あまり胸を張れずにいたという。世界史の授業を、実物大の猿人の模型を使った解説から始めるなど、生徒の興味・関心を高めようと創意工夫はしていた。 有明海の干潟で運動会を行う「ガタリンピック」の立ち上げにふれる機会があり、感銘を受け、夏休みに生徒に地元の歴史を調べるように促すなど、今の探究活動に通じるような実践も行ってきた。けれども、「歴史はたしかに面白いのですが、そこで学んだことが、どれだけ人の役に立つのかな、とも感じていたのです」だから県下一の進学校に勤務したときは、生徒のために「いかにテストで点数を取らせるか」を重視した。しかし、受験がうまくいって大いに喜んでくれた生徒たちが、大学生になって母校に遊びにきたときに、「先生からあれだけ教わったのに、大学に入った途端、知識が吹っ飛びました」と屈託もなく言うのを聞いて、歴史の授業に何の意味があるのか、ますますわからなくなった。転機となったのは、39歳の時に「歴史学を本格的に勉強したい」と思い、大学院に2年間通ったことだ。そこで大学の先生や小中高の先生たちと歴史学習のあり方を議論するなかで、「自我関与」というキーワードを作り出した。「新しい言葉を作ったつもりでしたが、社会心理学辞典に同じ言葉がすでにあることをあとから知りました(笑)。歴史の事物や事象を、生徒が自分との関わりを通して考え、把握し、想いを共有する。それを『自我関与』と定義しています。この視点をもった歴史学習では『自分ならどうするか』という問いが生まれ、時にはその問いが頭から離れなくなり、答えを出すように自分に迫ってくるようになります。結果、これからの自分の生き方や社会のあり方を、歴史のさまざまなものの見方や考え方にふれながら、模索していくことになります。歴史学習はすごく人の役に立つものなんだ。自分の中でそう腑に落ちたのです」生徒たちがそこに共感し、自分のことのように考えられるテーマ――いわば自我関与の入り口となるのにふさわしい歴史の題材といえば何だろう?そこを探るなかで見出したのが、妖怪や童話といった、語り継がれてきた伝承だった。めながら、過去の人々の見方や考え方にふでは、はるか昔に起きたことだけれど、以来、昔からある伝承に旬の話題も絡れることを通して、生徒が生き方や社会のあり方を考える授業を研究開発してきた。『赤ずきん』『ハーメルンの笛吹き男』『ジャックと豆の木』の話の内容や時代ごとの話の変遷を通して考える「子どもの捉え方の変化」「退治されるものの存在」。コロナ禍にブームとなったアマビエと、漫画やアニメが大ヒットした『鬼滅の刃』を通して考える「見えないものや自然との共生」「共同体のあり方」。また、普段の授業でも自我関与につながる話題をはさんでいった。中国の秦の時代は統制が厳しく、技術者も失敗が許されないから優れた芸術作品が多数生まれた。続く漢の時代はゆるやかで芸術作品もややしまらない。「あなたはどちらの時代に生きたいですか?」というように。「高校で歴史を誰に教わったかは忘れてくれてかまわないんです。この教室でみんなで考えたことが『生徒の中に残る』ような授業をしたいと思っています」歴史は面白いけれど役に立つのだろうか?浮かべた「問い」が頭に残り、本人に迫ってくるような授業を実物大の模型を使って行ってきた、人類の進化について学ぶ世界史の授業。白川隆信氏の教材キットを活用し、色塗りを生徒にも手伝ってもらって、模型を自作したという。プリントは既存資料のコピーではなく、各種資料から引用した文章を堤先生が打ち、写真なども挿入している。自作プリントを解説してこそ伝わる、と若いころに教わったという。授業では、知っている妖怪や、伝承を読んで感じたことを、生徒に挙げてもらう場面も。「正解を答えないといけない」などといったプレッシャーは生徒たちにないようだった。創立1963年/普通科生徒数533人(男子330人/女子203人)進路状況(2023年3月卒業)大学69人、短大8人、専門学校等73人、就職21人       かつて体育コースを設けていた学校で、2024年度より普通科の1コースとして改めて「スポーツ科」を新設。アスリートから指導者やスポーツビジネスまで、スポーツにかかわる幅広い進路を目指すためのカリキュラムを推進中。2024 APR. Vol.45058校長先生INTERVIEW校長廣重昭博先生佐賀東高校(佐賀・県立)社会に出るための考える材料を多方面から 堤先生とは、以前に私が本校で教頭を務めたときもご一緒しました。学者肌で研究熱心で、責任感の強い先生。印象的だったのは、その当時から「妖精」のことなどを研究課題にされていたこと。受験指導だけでなく、そうしたアプローチからも、生徒が社会に出ていくうえで、さまざまなことを考える材料をもたらしてくださっています。 本校はスポーツに力を入れていますが、体育だけをがんばらせたいのではありません。数学や理科で科学的な視点を養ったり、社会科や探究の学びで 自分の目標を見つけたりと、カリキュラム全体で、生徒が進路を自ら切り拓いていけるように支援することを目指しています。

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