歴史上の多様な価値観から今までにない考えを見出すこれまでの妖怪や鬼の授業では、生徒たちからこんな感想が寄せられている。「自分も怖いとき、妖怪の気配を感じる」「恐れられてきた妖怪を『何かへの危機感』という視点で捉えることができた」「日本と西洋の違いを、宗教や歴史的背景から学ぶことができて面白かった」「架空の存在は昔の人々や歴史を動かした一つのモノというのに興味が湧いた」「空想の物語でも、自分にひきつけながら考えたことで、今までにない考え方をもつことができたので、面白かった」「自分のことに置き換えて考えることができ、点と点がつながって面白かった」堤先生はそのように、さまざまな時代 「最近の歴史学習は、現代と結びつきのの物事を生徒が自分に重ね合わせて考えるようになると、嬉しくなるという。強い近現代に力を入れようとしています。ただ、先の読めない時代だからこそ、それとはまた違う見方や考え方にふれることも、生きるヒントになるように感じています。例えば、非科学的と一笑に付されそうで、実は現代でも無意識には多くの人が共感する『目に見えないもの』との関わりなどを。そうした面からも物事を捉えていくことが、人生やこの社会をより豊かにしていくように思います」生徒INTERVIEW図1 「興味・関心」と「学ぶ意味・意義」の接点となる自我関与59歴史上の事象と今の事象を重ねる・ 歴史の事物・事象を、生徒が自分との関わりを通して考えられるようにしたいと思っています。・ 過去の人々の見方や考え方に、生徒が共感したり、新たな気づきを得たりしながら、「自分ならどうするか」を考え、そうして自分の心に残ったものを基に、生き方や社会のあり方を考えていってほしいです。創作物の人や社会を歴史に重ね合わせる映像や画像で過去と現在をつなぐ自我関与の学びに教師ものめり込む歴史への興味・関心心ひかれた歴史の事物や事象をもっと知りたくなる2024 APR. Vol.450左より、松村琉愛さん、岩下 麗さん、堤 知貴さん、森山大貴さん、中村陽人さん堤先生は、ある事象を過去の人々がどう受けとめたかを紹介しながら、そこに通じる現代の出来事も挙げ、生徒に自分ならどうするか考えるように促している。疫病の歴史と、コロナ禍の出来事を対比する、といったように。――堤先生の授業の特徴といえばなんだと思いますか?堤(知貴)さん 電子黒板を使ってくれて、黒板には大事なことを書いてくれて、プリントも毎時間いろいろ配って説明してくれます。松村さん そのプリントが、教科書に書いてないようなことも書いてあって奥が深いんです。それを基に解説してくれるので面白いです。――印象に残っている授業を教えていただけませんか?岩下さん サンタクロースの由来の授業です。「本当にいるの?」という少女の質問から話が広がり、すごく面白かったです。クリスマスはキリストの誕生日ぐらいの印象でしたが、西洋の歴史を知りたくなりました。中村さん 妖怪の授業です。西洋の怪物やモンスターは、日本の妖怪とはまた違うでき方をしたんだ、とわかってきて、日本と海外の考え方の違いとか、そういうのをもっと知りたくなりました。自我関与森山さん 今のロシアとウクライナの情勢にちなんで、歴史を説明してくれた授業です。昔の国と国の関係とかを知ると、今の状況もわかりやすくなったので、そういう歴史をもっと知れたらな、と思いました。歴史を学ぶ意味・意義歴史の事物や事象に自分を重ね合わせて生き方も考えるように鏡像(向きが逆になる)歴史の事象に絡めて、はやりのアニメやドラマの「人や社会の描かれ方」も題材や小ネタで活用。昔の考え方が現代にも息づいている例として示し、生徒が好きな創作物と歴史の両面から生き方を模索できるようにしている。教師は、生徒が「心ひかれる」ような歴史の事物・事象を提示する。(興味・関心の喚起)提示する際、その題材を、生徒が「自分との関わりを通して考え、把握し、想いを共有」(自我関与)できるように工夫、アレンジする。または、生徒が「自分との関わりを模索」できそうな題材を選定する。こうして、そこから生まれる問いは、「自分のこととして考えざるを得ない問題」である。すると、今度は、この問いが、生徒に、問いに答えるよう迫ってくる。歴史学者・阿部謹也氏の言う「それをやらねば生きていけない問題」となり、生徒はその問いを(歴史を通して)考えるなかで、歴史を学ぶ意味・意義を感じるようになる。(興味・関心から追ったものが学ぶ意味・意義あるものに反転)妖怪の授業のあとは、現代のスターバックスのロゴマークと、歴史上の絵画の共通点から、中世の両性具有やタブーに迫る授業も実施中。妖怪の絵もそうだが、視覚的な情報でも過去と現代のつながりを提示している。定期テスト後に行う授業は、配付用の資料から、電子黒板用の資料まで合わせると相当な準備が必要になる。でも堤先生は、そのように歴史を通して生き方や社会のあり方を考えるのが、自身にとっても「楽しい」そうだ。物事の背景にある歴史にもふれて考えを深めてみたくなった
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