キャリアガイダンスVol.451
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みによって(21ページの改善活動例も参照)、誰もが生き生きと働けるよう工夫を重ねています。また、精神障がいや発達障がいがある方に対しても、先進的なツールなどを活用しコミュニケーションの見える化を図り、相互理解につなげています。その結果、本人は「自己開示し助けを求める」、メンバーは「違いを認め補完しあう」、上司は「配慮はするが遠慮はせず指導する」といった密度の濃いコミュニケーションが行われています。酒井先生には、先ほど工場を見学いただきましたが、どのようにお感じになりましたか?一人ひとりが生き生き働く姿が印象的でした。「できないこと」を、自作の機械などで補っている様子を実際に目にし、とても驚きました。学校でも、「個性を大切に」とか「可能性を伸ばし」という言葉はよく使われますが、生徒の「できること」に着目こそすれ、「できないこと」も含めて、本当に一人ひとりの特性を理解し、可能性を引き出しているだろうかと考えさせられました。また、「配慮はするが遠慮はしない」といったコミュニケーションにも驚かされました。これについても、学校は「みんなで」という言葉を使う割には遠慮することも多く、教員同士、あるいは生徒や保護者と腹を割って話せているだろうかと自問していました。学校の先生は多忙で、生徒一人ひとりに対応したくてもできない状況にあることは耳にしています。消費者意識の高い保護者も増え、信頼に基づく厳しい指導、それこそ「配慮はするが遠慮はしない」指導がしにくい現実もあるでしょう。弊社は、障がい者の雇用に特別の配慮をする特例子会社という性格から、社員一人ひとりとの対話を徹底しています。ただ、一般に日本の企業の多くは今、余裕がありません。丁寧なマネジメントや、先々を考えた人材育成をするべきなのに時間もお金もない。社会全体の課題だと思います。組織運営については後で伺うとし―     今回、探究学習について知り、弊社が長年取り組んできた「人に業務をつける」改善活動や「徹底3S活動」と重なる点が多いと感じました。徹底3Sは、整理・整頓・清掃を徹底し、常によりよい職場にしようとい「課題の設定」というハードルを越えるカギをどう見つけるかて、働く方々が問題に気づき、チーム活動を通じて改善策を提案し、課題解決につなげる。こうしたプロセスは探究そのものと感じました。設定すべき課題は、「ありたい姿」と現実のギャップのなかに潜んでいる■オムロン京都太陽とは社会課題の解決に向けて障がい者雇用という オムロン株式会社と社会福祉法人太陽の家の共同出資会社として1985年に設立。きっかけは、整形外科医の中村 裕が1964年の東京パラリンピック日本選手団団長を務めた際、職業的自立を果たしている欧米の選手に衝撃を受けたこと。「保護より機会を」をモットーに太陽の家を開設し、障がい者の自立支援のため東奔西走。その過程で、「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」という社憲を有するオムロン創業者の立石一真と出会い、互いの理念が共鳴した。 立石は、「モノの豊かさを求めた工業社会の後は、心の豊かさに価値を見いだす自律社会へと移行する。その過渡期にあたる最適化社会では、工業社会で置き去りにされた社会課題の解決がテーマになる」と未来を予測。障がい者雇●設立/1985年●従業員数/63人。うち障がい者36人、健常者27人(2023年6月現在)●事業内容/電気機械器具の製造●京都市南区用もその一つと捉えた。 同社の代名詞となっているのが2005年度から実施している「徹底3S」と呼ばれる活動だ。常に改善していこうという風土醸成として始まり、整理、整頓、清掃に関する工夫から、生産性向上や品質向上につながる提案まで、大小合わせて年間1万件以上の提案が出てくるという。「一人の100歩より100人の一歩」をスローガンにチーム単位の活動として行われ、管理職を含め全員が参加。定期的にアイデアを出し合い実行する。毎月の報告会のほか、年1回の発表会では表彰式も開催する。2024 JUL. Vol.45120

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