キャリアガイダンスVol.451
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―   ― ば、学校の外の世界についてもよく知りませんでした。数年前、長期の休みが取れ、40日かけて出張では行かない場所を中心に世界一周しました。政治や宗教、文化など初めて知ることが多く、帰国後「取引先の人は、どんなバックグラウンドをもつのだろう」と興味が湧くようになりました。若いころにこうした経験を積んでいたら選択肢も広がっていたのではと感じます。その点、総合的な探究の時間という、普通の授業とは違う、自由な時間があるのなら、多くの体験や他者との関わりを通じて何かを感じ、考える機会にしてほしいです。えで、酒井先生は「なぜそれをするのか本質を理解し、共有することが大切。HOWではなくWHYの共有を」れの働きでわれわれの生活を向上しよりよい社会をつくりましょう」という社憲があり、どうすれば、よりよい社会をつくれるか、それこそ探究し続けてきた会社です。精神障がい者の活躍拡大など、課題は無数にありますが、酒井先生が言うように、「何のために」という点をぶらさずにいきたいです。学校にも教育理念があり、探究の充実も、理念を実現するための一つの方法でしかありません。私も、そこはぶらしてはならないと思っています。ありがとうございました。最後に、探究で培った力は、卒業後、どのように活かされると思いますか?難しい質問ですが、まずは、自分の動機に照らして人生を歩いていけるようになること。次に、「私はこれを探究したい」という動機をもつようになると、多少の困難であっても、自分を追い込みながらも、解決に向かってとことん突き進むようになること。そして、そうした体験を積むことで、次に大きな課題にぶつかったとき乗り越えていく自信になることではないでしょうか。職場だけではなく、日々の生活でも活きてくると思います。探究やキャリア教育を通じて育まれた力やマインドが社会でこそ必要になることが実感できて嬉しいです。今度は生徒さんや先生方を連れて来てください。企業の取組を多くの人に知ってほしいし、地元の高校と接点がもてることは「よりよい社会をつくる」うえでも、大切な機会だと思っています。(18ページ)と強調されています。課題解決に向け自分を追い込んだ経験が次の困難に打ち勝つ自信にその「総探」を組織的に進めるう同感です。オムロンには「われわ私たち技術グループは、「こういうものがあれば嬉しい」という要望に基づき、障がいがある方の作業をサポートする機械や治具の開発や製作を行っています。自前で製作するためコストが抑えられ、メンテナンスのポイントもわかります。完成して「使ってください」で終わりではなく、現場で機能しているか確認しながら改善を加えています。私が卒業した高専では、自分で課題を見つけ改善していく探究的な授業が充実していました。技術云々よりも、そういう考え方が体に染み込んだことが今につながっていると思います。同じことをしていても課題感をもつ人と、そうでない人がいます。理想を高くもつ人は、不便と感じたことを改善しようとするのに対して、現状で満足している人はそうはなりません。その点、徹底3S活動は会社だけではなく、人を成長させるものだと思っています。2024 JUL. Vol.451もともと手先が器用で、中学校の技術の授業でハンダゴテを習ったことがきっかけで、技術に関わる仕事に就きたいと思いました。工場では、「改善できることはないか」「車いす作業者にとって不便はないか」など、絶えずアンテナを張っていますし、「こうしたものがあればいいのに」といった要望があれば、どうしたら応えられるか考えるようにしています。例えば、工場内には緊急時に赤く光る回転灯がありますが、関係のない別のラインの作業者から「まぶしい」という不満があがっていました。そこで、必要な方向以外は光を遮断するカバーを自作したところ、思った以上に喜ばれました。私生活でも、以前、自転車でヒヤッとした経験をきっかけに、今の私の自転車は、ウィンカーやブレーキライトが光るように改良しています。特集 今、探究をどう進めるか?■社員さんに聞く「私にとって“改善”とは」23品質環境技術課 藤原汰智さん日常的な改善活動を通して、会社だけではなく人も成長する太陽の家 制御機器科 田中大樹さん改善できることはないか、常に周囲に気を配る日々

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