キャリアガイダンスVol.451
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南紀熊野ジオパークで行われた、特別非常勤講師によるフィールドワークの様子(学校設定科目「ジオパーク学」)。 串本古座高校魅力化プロジェクトの始動以来、「グローカルコース」を中心に地域と連携した探究的な教育活動を実践。探究のコンセプトは「夢を語れる18歳の育成」。地域をまるごと学びのフィールドとし、3年間を通し016年度に「串本古座高校魅力化プロジェクト」として学校改革をスタート。「学校内や教員だけでは育てきれない部分がある」「地域の生産人口が減少し、地場産業が衰退している」という課題感から、自然、文化・歴史、地場産業、地域人材といった地域の資源を活用し、生徒が地域で学ぶ、そして、ゆくゆくは地域に貢献できる人材に育つ…という「地域まるごとキャンパス構想」を立ち上げました。並行して、本校の校長が串本町と古座川町の町長にはたらきかけ、魅力ある学校づくりのために三者が連携・協力することが約束され、「串本古座高校地域協議会」が設置されました。この地域協議会の存在が、外部連携の要となっていきました。 具体的には、地域協議会が商工会、行政、地域の事業者・住民などに対して高校の教育活動への支援や協力を依頼し、地域まるごとキャンパス構想に基づく学校設定科目(紀伊半島探究、南紀食文化探究、ジオパーク学、水産生物探究、マリンスポーツなど)の特別非常勤講師を務めてい312024 JUL. Vol.451ラムサール条約に登録された世界最北の大サンゴ群生域にて、ダイビングを体験する生徒たち(学校設定科目「マリンスポーツ」)。て段階的に自分の未来を切り拓いていく。1年次には、自分のあり方や生き方を深めながら「自分の夢」について考え、2年次は「地域の素材を活かして新たな価値を創造せよ」、3年次は「自らの探究的な学びを地域に還ただきました。例えば、地元のダイビング協会の方に協力していただき、学校のプールで実習をしたうえで実際に海に潜ってライセンスをとる…ということもやりました。力を貸してくださった方の人数は、2018年度にはのべ300人近くに上り、こうした外部とのつながりは本校で取り組んでいる探究活動にも引き継がれていきました。 地域と学校をつなぐうえで重要な役割を果たしているのが、地域協議会から派遣され校内に常駐する地域支援コーディネーターです。科目ごとに、学年主任や管理職、教務らも参加する担当者会議を毎月開催し、教職員とコーディネーターが一緒に授業をつくっています。コーディネーターは、育てたい生徒像や身につけてほしい力、教員・生徒や科目のニーズを深く理解し、それに応じた地域人材とつないでくれます。実際に地域の方に協力をお願いすると、地域の未来を担う高校生のためならと、ひと手間かけることを厭わない方がほとんど。力を貸したいと思っている人、見守ってくれる人は、実は地域にたくさんいる。こちらからアプローチして思いを伝えることが大事なんだと実感しています。 これまでの探究活動では、生徒の興味・関心に応じて、それに見合った方をコーディネーターが紹介してくれるケースが中心でした。今後は、生徒が自らアポイントメントをとって出向くつながり方を強化したいと考えています。地域で育ってきた子どもたちなので、こちらが思っている以上に、地域の人のことを知っていたり、つながりがあったりするんです。生徒は失敗もするでしょうが、失敗からこそ学んでほしいし、失敗を恐れずに動きながらブラッシュアップしていってほしいと思っています。生徒が思い切って踏み出せるためには、生徒の無礼や失敗も含めて包み込んでくれる地域、一緒に生徒を育てようとしてくれる地域にしていかなければなりません。その手助けをしてくれるのが地域協議会であり、本地域ではそこがうまく機能しているのだと感じています。元せよ」というミッションのもとそれぞれのプロジェクトに取り組む。2024年度に普通科を「未来創造学科」に改編し、全国初の「宇宙探究コース」のほか「文理探究コース」「地域探究コース」を設置した。特集 今、探究をどう進めるか?地域協議会が大きな力となって、地域で生徒を育てています。串本古座高校 (和歌山・県立) 未来創造委員会委員長:髙須 崇先生

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