キャリアガイダンスVol.451
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テーマ評価 科目名の「探究基礎」は、大学での本格的な研究に備え、その基礎を身につけるという意味合いで、手法やテーマ設定もアカデミック色が強いのが特徴。1年次前期は「HOP」と位置づけ、自分の興味・関心事を掘り下げるとともに、論文や書籍などを通して根拠に基づいた論述を学び、課題設定に取り組む。「STEP」のステージである1年次後期から校で大事にしているのが、日頃の評価、いわゆるフィードバックです。教員による「評価」の本来の目的は、生徒自身が自分のできているところ・足りていないところを自覚し、目標や課題を見いだし、次につなげることだと考えています。単に点数や段階を示されるだけでは、生徒は自分の現状は把握できたとしても、次にどうしたらいいかはわかりにくいですよね。ですから、成績表に載せるためにつけるもの、成果物や取り組む姿勢を総合的に見てつけるものという結果的な評価よりも、毎回の授業のなかや日々の生徒とのやりとりのなかで伝える段階的な評価のほうが本質的だと考えています。 日常的な評価を行ううえでは、生徒一人ひとりと向き合い、「(探究を通して)この生徒はどうしたいのか、どうなりたいのか」「なぜ、この生徒は今ここで困っているのか」といったことを汲み取ることに重きを置いています。本校の探究は少人数のゼミ形式のため、授業内で生徒と面談する機会が多く、そこで進捗や困りごとを確認し、フィードバックをしています。また、「探究ノート」という生徒と教員の交換日記のようなものがあり、生徒は毎時間、授業での気づきや課題、次に何をすべきか、どこで行き詰まっているかなどを記入し、それに対して教員がコメントを返しています。ルーブリック上ではさまざまな観点で評価基準を設けていますし、探究を通して身につけてほしいことは生徒とも共有していますが、探究において最も重は、学問分野ごとにゼミに分かれて研究手法を身につけ、個人探究への助走を始める。さらに、「JUMP」とする2年次前期は個人探究に取り組み、期末には発表を行い、最後は論文にまとめて提出する。 2022年度からは、「生徒に時間を返す」というカリキュラムコンセプトの下、7時間目の授業を一部削減。空いた時間をどう使うか、生徒の研究状況報告書の一例。生徒の書き込みに対して、「仮説はある?」「どんな方法で計測しているかな?」「中間発表のときのTAさんの指摘やね」など、教員が細かく突っ込みを入れている。要なのは「その生徒がどうしたいのか・どうなりたいのか」です。これは、生徒自身に聞かないとわかりません。生徒と教員がそこを共有できれば、評価の観点や基準が見えてきます。言い換えると、現状どのような課題があるか、今後に向けてどのような目標が設定できるか、次に何をしたらいいか…といったことについて、一緒に考えたり提案ができたりするのです。 昨年度の本校の教育研究大会は、「目標・課題点を生徒と共有する評価 〜生徒が主体的に学習するために〜」というテーマで行いました。生徒は、自分に足りていないもの(課題)や目標がわかったときに、モチベーションが上がり、主体的に学習に取り組めるようになるのではないか。そのためには、生徒と教員が目標・課題点を共有するような評価のあり方が重要なのではないか。そうした考えの下、本校では試行錯誤を続けています。生徒自身がデザインするという取組を始めた。その一環として、新たに2年次後期に「Academic Project」を開設(必履修)。生徒の主体性を重視し、生徒が自ら指導教員を選んで相談する、大学のゼミのような形式が特徴だ。テーマや個人・グループなどの縛りは設けず、「自分のやりたいことをできるところまで追究する」ことを優先している。2024 JUL. Vol.45134交換日記形式を用いて、生徒を日常的にも評価しています。堀川高校 (京都・市立) 研究部部長:濱田 悟先生評価のつけ方、ずっと模索しています…

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