キャリアガイダンスVol.451
35/66

 2019年度より探究に取り組み、試行錯誤を重ねてきた長崎南山高校。同時期より、生徒の様子から一人ひとりに適した学び方を見いだす「見取り」に力を入れ、プロセス評価におけるフィードバックにも活かしてきた。 1年次の前半には、人生の羅針盤となる2024 JUL. Vol.451校が初年度からこだわってきたのが、「成果ではなくプロセスを評価する」ということ。「探究の学びはプロセスにこそある」という考えから、探究を通してその生徒がどのように試行錯誤したのか、工夫したのか、最初の段階からどう変化・成長したのかを見取ることを重視してきました。 プロセス評価の基本は、日々の授業のなかでの「見取り」と「問いかけ・フィードバック」です。教員は机間巡視しながら生徒の様子を観察し、「そのアイデアいいね」「前回はこう言っていたけど、その後どうなった?」「どこで行き詰まってるの?」などと声をかけていきます。教員だけの視点に偏らないよう、長崎大学の学生や外部人材の方にもできるだけ授業に入ってもらい、多角的な視点から問いやフィードバックがもらえるようにしています。生徒には毎時間、ポートフォリオに何をやったかどう感じたかといった振り返りを残してもらい、教員はそれに対してもフィードバックをしています。35上部は「探究課題設定ルーブリック表」。生徒と共有し、課題設定の際に、目線合わせに用いている。下部は課題設定のベン図。「自分がやりたいこと」「社会で求められていること」「実現する可能性があること」「新規性」の重なるところに課題を見いだす。自分の「Will(意志)」を深掘りするワークショップを実施。後半は、見えてきたWillに基づき課題設定を行う。2年次からは探究が本格的にスタート。クラスを横断してテーマごとに6つのゼミに分かれ、その後は3年次の7月までゼミごとに活動する(現・高校1年生のカリキュ※探究を通して身につけたい8つの力1. 課題発見力…物事に対して常に疑問を持ち、その問いを主体的に考えるカ2. コミュニケーションカ…自分自身のことを理解し、相手の立場や気持ちを尊重して話す力3. 気づく力…物事の変化や相違点、そして自身がハッとする瞬間を大切にする力4. 主体性…自ら考え、計画し、行動し、振り返って次に生かす力5. 発想力…固定観念から脱却し、他者の意見を受け入れ、発想を広げるカ6. 論理的思考力…一つひとつの物事のつながりを理解し、相手に伝える力7. 計画力…プロジェクトを遂行するための計画や実行に向けて活動する力8. 創造力…未来を創り上げていく際に、既存の固定概念を取り払い、新たな価値を創造する力※ダウンロードサイト:リクルート進学総研>> 刊行物>> キャリアガイダンス(Vol.451) こうした日々の積み重ねを、2年次には「プロセス論文」としてまとめ、3年次にはその論文を基に「プロセス発表会」に臨みます。いずれも、これまでの自分の取組を、つまずきも失敗も含めて振り返りながら、紆余曲折の変遷を言語化し、どんな力を使った、もしくはどんな力がついたのかをメタ認知することを大事にしています。力については、本校で磨いてほしい8つの力※を提示しており、生徒はそれに当てはめて自己認識・評価をしていきます。評価で大事なのは、生徒に自分の変化や成長を実感させ、さらなる伸びにつなげること。プロセス論文やプロセス発表会の評価についても、何ができた・できないではなく、次につながるフィードバックとして行っています。 プロセス評価にこだわるようになった原点は、私自身が感じた違和感にあります。探究を立ち上げるにあたり、さまざまな学校に視察に行きました。その先で見たあるポスター発表は、確かに成果としてはもの足りないけれど、生徒たちが一生懸命に取り組んだことがわかるものでした。しかし、周りにいた先生たちは「あれはダメだ」と否定していて。生徒が自分のやりたいことをやるのが探究のはずなのに、成果ばかりを求めるのはおかしいのではないか、そもそも良し悪しなんて決められるのかと、納得がいかなかったのです。最初は調べることもできなかった生徒が、探究を通して自分から動けるようになった。その変化を、成長を、しっかりと認めてあげることが大事。本校ではそうした信念に基づいて評価をしています。ラムの場合)。各ゼミは基本的に2名の教員が担当し、学校独自の教材を使いながら生徒の探究に伴走する。長崎県内の企業や人材など外部との連携も進んでおり、德田先生らの呼びかけで、県内の起業家と高校生をつなげる取組も始動している。特集 今、探究をどう進めるか?どう成長したか、プロセスを評価しています。長崎南山高校 (長崎・私立)進路部キャリア探究課課長・総合探究委員会委員長:德田憲一郎先生

元のページ  ../index.html#35

このブックを見る