キャリアガイダンスVol.451
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テーマ指導方法 1年次は「自己探究」で、自分と向き合うワークから課題設定まで進める。2年次は「社会探究」で、課題に基づく探究にチャレンジ。3・4年次の「進路探究」では、今までのワークやノウハウを活かし、進路実現に挑む。 例年11月には全学年・全生徒による成時制夜間部の生徒には、不登校の経験のある者や、人前で話すのが苦手だった者が少なくありません。そうした生徒たちが自ら「問い」を見いだして探究できるよう、本校の定時制1年次の探究活動では、最初に自分と向き合うワークを徹底的に行い、そのうえで課題設定まで進めています。主なワークは次の通りです。■自分の強みを知ろう【2コマ】……ワークシート記載の多 数のキーワード(やり抜く力や慎重性等)を参考に、自分 の強みとその根拠となる経験を文章化します。■マインドマップ【3コマ】……連想ゲームのようにキーワー ドをつなげて自分の頭の中を整理します。■マンダラート【7コマ】……興味あるワードをあげ、関連す る本を最低1冊は読み、マンダラートと読書シートを作成。 「興味の幅」を広げます。■哲学対話【4コマ】……「何を言ってもいい」「否定的な 態度を取らない」などのルールに基づき、生徒が問いを生 み出し、考え、語り、聞くことをします。■5W2Hで問いを立てる【2コマ】……興味あるワードから、 はい・いいえで答えられる「閉じた問い」ではなく、簡単には 答えの見つからない「開いた問い」を、5W2Hで考えます。 こうしたワークを経て、生徒が自ら問いを見いだすと、2年次以降はそこに向かって本人なりのやり方で動き出すのです。インターネットで情報収集する生徒もいれば、論文を読み込む生徒や、足を使って調べる生徒もいます。プライベー果発表会があり、1月に各年次代表による発表会も。また、定時制の探究活動の全国大会という位置づけで、「結果ではなく、どのくらい自分の好きなものを探究できたか」を発表し合う「過程重視探究発表会」も、同校がホストとなり3月に開催している。トの時間も使って探究にのめりこみ、「ほかの授業を休んで探究に集中したい」と言い出した生徒もいました(笑)。 本校に赴任した時は、前任の進学校と同じような探究活動はできないだろう、と考えていました。ですが、今は本質は変わらないと感じています。例えば本校の生徒は、「興味・関心が既存の教科にはあてはまらなかったが、好きなものや才能は眠っている」と言えます。ただ、その自分の中にある思いを表に出すのを「怖がっている」ことが多いのです。同じような傾向は、前任校の生徒にも見られました。だからこそ、探究活動に関わる先生方には、まず「対話をしてください」とお願いしています。対話によって生徒の思いを引き出してほしい、と。 探究のなかで生徒が外部のいろいろな人にふれることも大事にしています。哲学対話をしてくださる大学教授や、探究をサポートしてくださる経営者、キャリア教育コーディネーター、宮崎大学の学生の皆さん。その出会いが生徒に新たな気づきをもたらし、自分の才能を見つけたり、伸ばしたりすることもあると思うからです。 定時制夜間部は、以前は半数近くが中退することもありましたが、ここ数年はほとんど退学者が出ていません。探究で自発的な読み書きをするからか、総じて国語の成績も伸長。ある生徒は、興味の幅をアニメから経済まで広げて簿記の資格を取って進学し、別の生徒は、探究の成果で国際シンポジウムで最優秀賞を取るなど、個々の生徒が秘めていた力を発揮することも増えてきています。 同校の生徒がこれまでに取り組んだ探究テーマについて、一例をあげれば、「なぜ人に好かれようとするのか」「コスパ最強の地図作製法」「民衆が日清戦争・日露戦争に賛同した理由」「人を感動させるコツ」「ゴキブリが嫌われる原因は何だろう」などがある。2024 JUL. Vol.45136自分が習ったことない「探究」、どうサポートしたらいい?生徒が自ら「問い」を見いだせるように後押ししています。宮崎東高校 (宮崎・県立) 定時制課程夜間部:西山正三先生

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