キャリアガイダンスVol.451
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編集後記今号は、2022年から本格実施となった「総合的な探究の時間」について、改めて特集いたしました。各学校での取り組み内容を元に、生徒の変化や成長、進路選択への影響のみならず、その裏側にある先生方の葛藤、苦労、工夫なども、実施から少し時間が経った今だからこそ具体的なお話を伺うことができました。探究学習に対しては、捉えどころのない難しさを感じている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、取材を通して見えてきたのは、探究学習は必ずしも「型」や「ステップ」に当てはめていく必要はなく、それぞれの学校や地域、生徒に合った活動を模索し続けていく、過程そのものを楽しむ姿。あり方に正解がないからこそ、そのような心の持ちようが、大切なのかもしれないと僭越ながら感じました。私たち編集部も、探究学習についてこれからも取材を重ねることで、その深化を共に学ばせていただき、今後も編集と情報発信を通して、探究活動の一助となるよう努めて参ります。探究の意義探究の「具体的な価値」がまだ見えなくて…テーマ探究の山を登る 「知の活用」として教科横断型のクロスカリキュラム授業を展開。「知の深化」として、3年間を通した課題研究に全校生徒が取り組む。また、「知の交流」として、科学的対話スキ校では、実社会・実生活から生じる「問い」を複数教科の知識・技能を活用して深める「クロスカリキュラム授業」を推進しています。全教員が、年1回は、他教科の先生と組んで、互いの教科の視点を活かしながら「問い」を考え、教科横断型授業を開発・実践するのです。生徒はその授業のなかで「知の活用」を体感し、その経験も活かして、自分のテーマを探究する課題研究に挑んでいきます。 こうした取組は「教員の指導力向上や授業改善に役立つか」について、例年アンケートを取っています。結果、「とてもそう思う」と答える先生は年々増加し、8年前は29%だったのが、昨年は65%に。「そう思う」と答えた先生も合わせると9割以上が肯定しています。主な理由は「教材開発で発見がある」「他の先生の視点や着想、手法を得られる」「教科間の連携が促進される」というもの。本校のクロスカリキュラムは、深い学びのプロセスである「習得」「活用」「探究」のうち、「活用」を意識しています。クロスカリキュラムによっルの習得を目指し、データサイエンスやプレゼンテーション等について体験的に学習する。 同校ホームページのSSH事業紹介ページでは、これまでに開発・実践されてきたクロスカて普段の授業と探究をつなぎ、深い学びの実現を目指します(鈴木幸英先生)。 生徒は自身の課題研究を通して、科学的アプローチ、データ処理、ロジックのまとめ方、ルーブリックによる評価なども実践的に学びます。最近では、そうした探究で身につけたことを、普段の教科の授業でも活かすよう、先生方が生徒に促しています。「仮説・検証しよう」「ロジックを整えて」「ルーブリックを使うよ」などと。「探究でもやったよね」と。探究と普段の授業とのつながりを意識した声かけをすることで、どのような場面でも活用できる汎用的な見方・考え方が身につけられると思います。 課題研究では「武器は何を使ってもいい、使える知識や技能を自分で手に入れて。高校生の枠にとらわれないで」と呼びかけています。すると、自分で学んでどこまでも伸びていく生徒が出てくるんです。そうした生徒の探究に一緒にわくわくできるというのも、一律の授業だけであったら味わえなかった体験だと思っています(岡田直之先生)。   リキュラム授業の指導案や課題研究の教材等を確認できる。また、2024年12月には、これまでの研究成果を踏まえた公開授業も予定されている。2024 JUL. Vol.45140探究が、教科指導の向上や改善にもつながりました。高崎高校(群馬・県立) SSH主任:岡田直之先生、SSH副主任:鈴木幸英先生

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