キャリアガイダンスVol.451
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年、「自分を創造する」をビジョンに掲げ、探究科のエッセンスをすべての教科に移植した「創造コース」を創設した。創造コース教育推進部長・牛込紘太先生はこう語る。 「学校や保護者が目的地への最短距離を示して引っ張るのではなく、生徒が寄り道しながらでいいから自分で自分の道を歩むことを大切にしています。まずは自分を真善美          知り、興味関心のあることを存分に学ぶ。学ぶことの楽しさをとり戻す過程のなかで、生徒は自分を創造していけるのではないか。そんな考え方に基づいて生徒を支援するのが創造コースです」同コースの大きな特徴は、形式的な学びからの脱却をめざした、LHR、教科学習、プロジェクト実践を組み合わせた独自のカリキュラムにある(図2)。学びのテーマには、1学年は当たり前を疑い手放す「真」、2学年は他者や社会を知り判断基準を見つめ直す「善」、3学年は自分軸をもってゼロからの創造に挑戦する「美」を設定(図3)。LHRは、このテーマに沿った概念を学ぶ時間とし、これまで当たり前だと思っていた価値観に揺さぶりをかけ、手放すことで、自分の世界を広げていくベースをつくる。教科学習は、最初に知識を与えてそれを使ってみるという一般的なアプローチとは逆で、まずやってみて、そうなる理由を考察し、調べて深めるという順番だ。例えば、「真」をテーマとする1学年のある日の「歴史総合」では、教育基本法を読んだうえで、「今後を生きていくために必要な能力を身につけさせる教科書づくり」に取り組み、意見交換を実施した。学びの連続性を意識し、時間割は2コマ連続を基本としている。このように概念と教科を並行して学ぶことで、教科の学びは概念の理解を深めるきっかけとし、概念の学びは教科の学びを横断的につなげることを狙っている。そして、年5回、LHRと教科で学んできたことを言葉、アート、音、ゲームなどさまざまな方法で表現する「プロジェクト実践」に取り組む。例えば、善悪の判断について学んだあとのプロジェクト実践では、ネガティブに感じることをポジティブに捉え直すことを楽しく体験するゲームを生徒が考案し、ワークショップを実施した。また、自分自身の判断基準を見つめ直して演劇として表現するプロジェクト実践では、演技はもちろん、台本や衣装作り、音響や照明まで生徒の手によって舞台を作り上げた。3学年では、一人ひとりが自分はどうありたいかや興味関心を突き詰め、卒業プロジェクトとしてアートとデザインで1つずつ作品を制作する。実施せず、各教科の評価はルーブリックによる観点別評価を行う。プロジェクト実践は評価を行わず、生徒が評価を気にせず取り組めるようにしているという。などでは、いかに生徒が主体的に取り組むかがカギとなる。それを促すアプローチは個々の教員によって異なるが、「生徒を誘導しない」「教員も面白がる」というスタンスはすべての担当教員に共通している。 「突拍子もないお題をもってくる生徒もいますが、第一印象で良い・悪いのジャッジをしないようにしています。ごく簡単な言葉を使っていても、非常に深い思考や経験のうえで行きついた言葉である可能性も同コースではペーパーによる定期考査は探究科や創造コースのプロジェクト実践あります。その背景にあるものを大切にしています」(牛込先生)また、牛込先生は、生徒をよく観察し、それぞれのタイミングを急かさず待つことを心掛けているという。 「エンジンがかかるタイミングは生徒によってさまざま。例えば、じっとしている場合も、何をしていいかわからないのか、やることは見えているが動けないのか、意図があって動かないのかなど、状況は異なります。それを単に見守るのではなく、探究科やプロジェクトで生徒が感じたことや考えたことを記入するリフレクションも含めてよく観察し、適切なタイミングで言葉をかけます。生徒の状態によっては別の教員から話してもらうなど、教員チームで連携して当たっています」(牛込先生)3年生に対して教員がやっていることはメンタリングに近いという。 「『これはどういう意味?』『これを大切にするためにどんな条件が必要だろう?』など、答えではなく問いを投げ、思考を深める支援や行動の後押しをしています。学年が上がるにつれて教員の支援は緩め、3年生ではほとんど生徒の自走に任せています」(牛込先生)創造コース1期生は今年度3年生になった。自分の考えをもって協働する学びの多さに、入学当初から魅力を感じていた生徒は多いが、苦手意識のある生徒もいた。しかし、今はそれぞれの個性を活かした関わり誘導せず、観察しながら待ち生徒の自走を促すまずやってみることから自分軸を大切にした将来へ創造コース2学年のLHR、「善」をテーマにした授業。創造コースの歴史総合で、生徒それぞれが作った教科書について意見を交換。クリティカルな思考で自分の中の「当たり前」を手放す社会の正解や常識から離れ、自分は何を知っていて、何が本当に正しいのか、という本質的な問いに立ち返ることで、自分の中の「当たり前」を手放し、常にクリティカルな視点で思考できる状態を目指します。他者や社会を知る中で自分の判断基準を見つめ直す社会の様々な事象に触れ、その背景を深く知ることで、社会の判断基準や善悪を理解します。その上で自己に立ち返り、自分はどのような基準や観点で動いているのか、自分自身の判断基準を見つめ直します。唯一無二の「自分軸」を持ちゼロから創造するここまで学んできたことを全て手放し、フラットな視点で自分の中に残っている判断基準を見つめ直します。それが唯一無二の「自分軸」であり、それをもって1年の集大成としてゼロから創造することに挑戦します。2024 JUL. Vol.45146図3 創造コースの学びのテーマ(1学年)(2学年)(3学年)

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