キャリアガイダンスVol.451
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方を見つけ、楽しむ姿が目立つ。自分の興味関心を大切にするなかで、ときには意見がぶつかることもあるが、「気を遣って丸く収めたり、喧嘩になったりではなく、それぞれの意見をきちんと主張して互いに理解しようとする建設的なコンフリクトができるようになってきた」(牛込先生)という。今、授業の枠組みにこだわらず校内外を舞台にし、さまざまなチャレンジが生まれている。グループワークが苦手だと言っていた生徒が、プロジェクト実践で取り組んだことを仲間と独自に深め、一部では商品化をめざして活動する姿も見られる。 「あらゆる授業・活動において、まずやってみる。それで違うと思ったら、手放すこともできる。『自分には関係ない』と捨てず何にでも全力で取り組むという、創造コースがめざす姿を一期生は体現してきてくれました」(牛込先生)自分と他者を行き来するさまざまな経験を通じて、将来に対する考え方が変化する生徒も少なくない。入学時は両親と同じ進路を歩むことに疑問をもっていなかった生徒は、学校生活のなかで教育の可能性を見いだし、教員という新たな目標を見つけて邁進している。また、海外に対する興味を内面に押し込めていた別の生徒は、環境の後押しで海外研修に踏み出したことから行動が加速し、海外留学という明確な目標に向き合うようになった。こうして生徒が自分で考えて選択した進路を、同校は全面的に応援する方針だ。 「自分は何が好きなのか、自分はどんなことを大切にしているのか。抽象的なままにせず、深めて言語化して自己理解の解像度を上げてきたなかで、自分の進みたい将来が見えてきている生徒も多いと感じています。その背中をそっと押すことで、生徒一人ひとりが自分で自分の道を切り拓いていく一歩を踏み出してほしいと思っています」(牛込先生)従来の教育への違和感を原点とした、    学びの「個別化」「協働化」「プロジェクト化」「リフレクション」を融合させていく10年がかりの構想は、コロナ禍という逆風による停滞期も乗り越え、着実に進んでいる。今後のさらなる進展に向けて、辻本教頭はこう意気込みを語る。 「本校が大切にする4つの学びのうち、最も難易度が高いのが『個別化』です。これも最近では広く注目されるようになり、公立小学校でも自由進度学習などが行われるようになってきました。そうした学びを経験した生徒たちが高校に上がってきたとき、4つの学びの融合をもう一段グレードアップできるのではないかと期待しています」(辻本教頭)。り「面白い学校」だ。辻本教頭は「こういう風変わりな学校が大阪に一つぐらいあってもいいだろう」と言う。同校がめざすのは、「良い学校」というよ 「本校にはさまざまなコースがありますが、すべてを創造コースのようにする考えはありません。多様な個性をもつ子どもたちがいるのだから、いろんな学び舎があってもいい。今後、子どもたちが自分に合う学び舎を選べるよう、いろんな面白い学校が増えていくのではないでしょうか」(辻本教頭)多様な生徒の選択肢の一つとして〝面白い学校〟をめざす1年生のプロジェクト実践では、自分をアートで表現。善悪をテーマにしたゲームを考案。体験するワークショップを開催。挑戦のハードルが下がり、「今やろう」先生の話を聞くだけではない授業に興味をもって、創造コースに入学しました。テストのための勉強は嫌いですが、自分のためになると実感できる学びは楽しいです。グループで協力しながら取り組む授業は、みんなから刺激をもらいながら嫌いな数学でも進めることができ、自分のための学びだと感じます。今がんばっているのは、小説を書くことです。頭の中にある世界観を表現したくて、小説という手段を使っています。本当は大人になってからやろうと思っていたのですが、プロジェクトでたくさんの大人と出会い話を聞くなかで、挑戦することへのハードルが下がり、「今やろう」と始(創造コース3年生・進 拓斗さん/写真左)めました。今は小説の執筆が学べる大学への進学をめざしています。 自ら行動を起こし、可能性を広げた中学生のときから海外に憧れがあり、高2直前の春休み、外部が企画するバリ島での研修プログラムに個人で参加しました。勇気がいることでしたが、「行かずに後悔したくない」と思い切りました。プログラムは、環境問題を自分たちで見つけて、その解決策をグループで考えるというものです。そのなかで人間関係が広がり、次の夏に新たな海外研修に挑戦するきっかけを掴むこともでき、活動の幅が広がりました。進学先は海外の大学を考えています。なるべく若いうちに日本を抜け出し、ちょっと負荷がある状況で自分を強くすることができたらいいなと思っています。 (創造コース3年生・水戸口 真優さん/写真中央)楽観的に捉えて行動するように親の勧めで創造コースに入学し、最初はグループワークに苦手意識がありました。でも、回数を重ねるうちに、自分はプレゼン資料を作ることが得意だと気づき、そこからグループワークが楽しくなっていきました。昨年、高知への探究旅行で、高知の良さを現地で伝えるワークショップに取り組んだとき、私たちのグループは「高知を知るすごろく」を作りました。現地の方にも好評で、「すごろくという形式は、ほかの物事や自分を知るときにも手軽に楽しく使えるのではないか」と考え、みんなで「これを商品化しよう!」という話になったんです。その後、再度高知を訪れて小学校ですごろくを使った授業をするなどし、改良を重ねています。これまでは「うまくいかない」と思ってやらなかったことも、今はやろうと思える。楽観的に捉えられるようになりました。 (創造コース3年生・山崎 凜さん/写真右)2024 JUL. Vol.451Interview47

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