キャリアガイダンスVol.451
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こうしたディベートを、生徒たちは今までに「人は結婚すべきである」「選択的夫婦別姓制度を導入すべきである」というテーマでも行ってきた。加藤先生はその取組のなかで「生徒が物事を多角的に捉えていく」ことを目指しているという。 「例えば生徒のなかには、自分の親のように『結婚する』のが当たり前と感じている子もいます。『結婚しない』という生き方はまだうまく想像できず、それだけにもし自分が将来結婚しなかったら、すごく戸惑ってしまう恐れがあります。そうした生徒たちが『結婚すべきに反対』の立場にも立ってみて、結婚しないメリットまで考えることで、初めて『こういう生き方もある』と捉えていけると思うのです」夫婦別姓にしても、賛成・反対のどちら側にも立って主張してみることで、それぞれの立場への理解が進んでいく。 「自分と異なる意見や価値観をもつ人のことを尊重できるようになること。そのうえで、自分の意見はしっかりと伝えられるようになること。そして、どんな生き方にもメリット・デメリットがあることを知り、自分や他人のいろいろな生き方を受けとめていける度量をもつこと。そうした学びをもたらせたらと思っています」     にどうやって相手を見つけて、どう仲を深い描いて「逆算して行動する」ことも促している。「2年後までに健康的で快適な一人暮らしができるようになろう」という目標を示し、そのために調理実習で自炊の腕を磨き、住まい選びの目も鍛える、というように。「結婚したいなら、いつごろまでめる?」と問いかけ、関係構築のプロセス一方、年間の授業では、今後の生活を思にも目を向けさせ、授業でも人をデートに誘うゲームをやってみる、というように。 「学校では、進学や就職といった『進路』の話はよくして生徒にも考えるよう促しますが、衣食住や結婚といった『生活』の話はあまりしません。本来、この2つは人生を歩むときの両輪であって、どちらも思い描くことが大事だと思うのです。そして『こんな生活をしたい』とイメージしたなら、そこに向かって行動を起こせる人にもなってほしいんですよ」行動してもうまくいくとは限らないが、何もしないよりは動いた結果のほうが納得がいく。なおかつ、「どんな生き方にも良し悪しがある」という視点が育まれていれば、思い通りにならない面があっても、その人生を楽しんでいけそうだ。 「どんな道を歩むかわからないけれど、その道であなたがあなたらしく輝けるようになってほしい。生徒たちにはいつもそうした思いを抱いています」ある人生を賛否両面で捉え自分の視野を広げていく進路のことだけでなく生活の理想も思い描こう51「賛成側が勝ったと思う人!」と加藤先生が呼びかけ、そうだと思った審判役の生徒が挙手する。判定を受けてガッツポーズしたり、「よっしゃー!」と叫んだりと、生徒たちは頭をひねるディベートを存分に楽しんでいた。一人暮らしの部屋選びのポイントを、皆で出し合った取組。加藤先生は情報科の免許ももっていて、ICTの活用も適宜進めている。住まいに関する学術的研究から、一人暮らしの初期費用といった実務面まで、加藤先生がレクチャー。生徒は興味津々だった。英語以外の教科の授業を、英語で進める英語イマージョン教育。学校全体で推進していて、加藤先生も手応えを感じている。2024 JUL. Vol.451賛成も反対も経験するディベート。回ごとに自分の役にあった主張を考え、ワークシートに書き込み、相手側の意見もメモする。

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