キャリアガイダンスVol.451
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戦翌年の1946年、資源のない焼け野原の国が発展するにはどうしたらいいか。技術を磨くしかない。なかでも当時最先端であった電波あるいは電子分野の技術者の育成が不可欠である。そう確信した創立者は本校を設立しました。以来、「技術は力」という揺らぐことのない建学の精神の下、高度な実践教育によって78年にわたり、電子・電気、情報システム、医療技術の各分野に10万人を超す技術者を輩出してきました。特にコロナ禍において、人々の命を守った医療技術者や、感染抑制と経済活動との両立を電子・IT技術の面から支えた技術者など、「技術は力」を体現してきた多くの卒業生を誇りに思います。本校には、技術の修得という共通の目的の下、性別、年齢、国籍を問わず多様な学生が学び、切磋琢磨しています。今後、人生100年時代を見据え、リカレント教育の重要性が高まるなか、高校の卒業生だけではなく、広く社会人や大学生の受け入れを増やしていくつもりです。それは本校の歴史を振り返ったとき必然ともいえます。というのも、高度成長期を中心に本校の夜間部には、大学で専門知識を学びながら実践的な技術も身につけたいという学生や、技術者として働きながら、さらに高いレベルの技術の獲得を目指す社会人など、さまざまな方が学んでいました。学びたい人が、学びたいときに学ぶ。こうした教育機関本来の役割を再び担っていくべきだと考えているのです。そうしたとき、本校と大学および研究機関の本質的な差異を明らかにしておく必要があるでしょう。私が思うに、最先端の技術の研究・開発自体は、大学や研究機関に担っていただくものと考えています。一方、本校の役割は、研究者・開発者に対する敬意を払いつつ、そうして生まれた新しい技術をいち早く理解、獲得したうえで、知識のないエンドユーザーに噛み砕いて伝え、的確な提案や解決を行うことができる技術者を育成することだと考えます。さらには、その過程で得られたユーザーの声に基づいて、新たな視点を大学や研究機関に提言できる存在となること。すなわち、研究者・開発者とエンドユーザー双方にとって不可欠となる技術者の育成です。その結果、世界に誇る優れた先端技術を、広く適切に社会に行き渡らせることにつながると考えています。そのためには在学中、技術の修得のみならず、あくなき探究心や人間としての素養も身につける必要があります。つまり、心、体、技がバランスよく調和している必要があるわけです。その点本校は、クラス担任をはじめとした教員と学生、あるいは学生同士の結びつきが伝統的に強く、特に「対話」を大切にしてきました。コロナ禍において、その機会が奪われた際も、それこそ技術の力を駆使することで、心と心の対話を成立することができました。多様な人との関わりを通じて心と体と技を磨き、一人ひとりが自分の人生を豊かにする結果として、社会の発展に貢献することを願います。55理事長プロフィール やまぐち・たかひろ●立教大学経済学部卒業。広報部、ビジネス科学部長、事務局、教職、学務部長を経て、2019年3月より現職。専門学校プロフィール1946年創立。医療技術系として、診療放射線学科、臨床工学科、臨床検査学科。情報システム系として、ウェブ・メディア科、情報処理科、情報処理科3年制、高度情報システム科、セキュリティ・ネットワーク科。電子・電気系として電子技術科、電気工学科を擁する。東京都豊島区。2024 JUL. Vol.451     終まとめ/堀水潤一 撮影/吉永智彦

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