今年度本校に校長として着任するまで、通算14年間を教育行政で勤務しました。ですから今、生徒を前に働ける喜びを噛みしめています。毎日1、2回は全教室を覗きますし、クラブ活動や各種発表会にも足を運びます。 本校では2014年から5年間指定されたSGHの取組を発展させたグローバル・スタディ(GS)という探究学習に取り組んでいます。7月の成果発表会では、各教室で待つ1、2年生を前に、3年生全員が発表しました。私も各教室を回りましたが、ある生徒の「人はなぜ虫を嫌いになるのか」というテーマに興味をもちました。3年生の発表を直接聞いた下級生は、自分もがんばらねばという気持ちになったことでしょう。その1、2年生の成果発表会は年明けにあります。夏休み中も、事業所などに連絡をとり、研究リサーチに励んでいるようですが、先日、県教委から「この間、お宅の生徒が来て、職員に取材していましたよ」と連絡がありました。行動力に驚かされ、どんな発表になるか今から楽しみです。 本校は生徒の主体的な活動が活発です。大分上野丘高校572024 OCT. Vol.4521885年創立。大分県屈指の歴史をもつ進学校。「実力と気品とたくましさ」という校訓の下、生徒自らテーマを設定し、リサーチ、発表へつなげる総合的な探究の時間「グローバル・スタディ」(GS)などを実践。修学旅行(今年度の行先はシンガポール)などの学校行事もGSの一環として実施する。3年間同じ団(紅・青・白)に所属し、縦のつながりによる自治の精神を涵養。生徒総会後、校則の見直しなど学校への要望書を生徒会長から手渡されることがあるのですが、誠実に回答するのも校長の務めです。今回、それを基に制服規定の一部改定を正式に決定しました。生徒なりに課題をもち、主体的に解決しようとする姿勢は頼もしいし、社会に出てからも、自ら課題を発見し解決する力を発揮してほしいと思います。 私個人は長期の行政勤務を通じて、普通は経験しないような業務にも携わりました。職場によって価値観が違うことや、誰かがしなければ社会が成り立たない仕事の多さも感じました。そうした経験は、「好き」だけを職業選びの基準にせず、使命感こそ大切という私のキャリア教育観にもつながっています。 何より学びとなったのはマネジメントです。現状を俯瞰し、外部の資源も活用しながら、今何が必要なのか判断しないといけません。 一般に学校には、問題がなければ、わざわざ変える必要はないという前例踏襲の文化があります。ですが県教委時代、同じような施策を提案すると、上司から「前と違うところはどこか」と必ず聞かれました。同じことを続けても改善ができないという考え方であり、次々と新しいことに取り組んできました。 ただ、上長が決裁すれば物事が動き出す行政と異なり、学校は状況を俯瞰できていない校長の独断による決裁だけでは、思うように動きません。教職員の共感が必要であり、多くのメンバーの意識が「そうだ」と一致して初めて動きだすのです。その代わり、動きだせばすごい力を発揮するのが学校です。 そのため、私が何を考えているか知ってもらえるよう日々心掛けています。反対意見が上がるのは当然ですし、そうした声こそ大切にしたい。そのうえで対話を重ね、共感しあうことができれば、より良い学校につながるのだと信じています。みうら・かずお/1965年生まれ。大分大学教育学部在学中、シンガポール国立大学で1年間の国費留学を経験。法学などにも興味をもったが、教育実習を機に、生徒と共に学び、成長する教職の素晴らしさを知る。1989年大分県立別府青山高校(当時)に英語科教諭として着任。2007年の大分県教育センター指導主事を皮切りに、計14年間教育行政勤務。大分豊府高校に教頭として在職時、全教科で実施した授業改善の取組はカリキュラムマネジメントの好例に。大分県教育庁教育人事課人事管理監、高校教育課課長、教育次長などを歴任後、2024年より現職。まとめ/堀水潤一 撮影/田崎真亜人探究を軸に教育活動全般を通じて自ら課題を発見し解決する力を養う(大分・県立)14年間の行政勤務の経験を学校マネジメントに活かす
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