キャリアガイダンスVol.453
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(リクルートワークス研究所)によれば、入社前の社会的経験(「複数の企業・職場の見学」「中高時代に複数の社会人から仕事の話を聞く経験」「長期のインターンシップ」「知人ではない多人数の前でのプレゼン・スピーチ」など)の多寡が、若手社員の職場に対する評価やキャリア意識(満足感やいきいき感)と相関しているということがわかっています。こうした調査を総合すると、若いときの社会的経験が、こんなことを学びたい、こんな仕事に就きたいという動機につながり、それが進学・就職先での満足度やその後のキャリア形成に影響を与えていることがわかります。とはいえ、現実には将来の目標や就きたい仕事を見つけている高校生は決して多くはない。やりたいことがあるというのは、恵まれていることでもあるのです。ただ、その恵まれた高校生にも落とし穴があります。それは「現在地と目標との間にあると本人が認識している機会しか、本人が機会として認識できない」ということです。若者に限らず、誰しも目標が明確であればあるほど、その途上にない機会は、無駄なものとして切り捨ててしまいがち。目標があるのなら、最短距離を行きたくなるものだからです。しかしながら、「計画的偶発性理論」を提唱したスタンフォード大学のクランボルツ教授や、「キャリア・ドリフト」という概念を提唱した神戸大学の金井壽宏名誉教授らが指摘する通り(次ページ参照)、キャリア形成において偶発的な出来事の影響力は計り知れません。多くの大人はこれまでの人生を振り返ったとき、偶然の積み重ねの上にキャリアが築かれてきたことを肌感覚で知っているでしょう。だからこそ、やりたいことが明確な生徒に対しては、新しいトビラを開けるチャンスを見落とさないよう、時おり、本人の視界の外にある機会に目が向くようフォローすることが大切です。もちろん、早くに目標を決めるにこしたことはありません。最大の理由は、新たな目標が見つかったとき再挑戦しやすいからです。私の好きな言葉に、「目的地のない船に追い風は吹かない」というものがあります。目指す方向が決まって初めて、今吹いている風が追い風なのか向かい風なのか判別できるし、今置かれている環境が良いか悪いかも判断できます。ただし、その目的地はあくまで「仮決め」のようなもの。次のステージで何が起こるかは、その時点ではわかり本人の合理性を超えた機会の提供によって視野が開かれる      2025 JAN. Vol.453学生時代のあなたさまざまな機会の積み重ねによって、ありたい姿や就きたい職業が見えてきたとしても、それはあくまで「仮決め」のようなもの。人生100年という響きから長距離マラソンを走り続けるイメージがあるかもしれませんが、選択の回数が増えるこれからの社会は短距離走の連続。ひと呼吸おいた後、次の未来が広がっていきます。多くの人は「さまざまな機会によって自分のキャリアは創られてきた」と振り返ります。機会には、自ら起こした意図的なものもあれば、「人に恵まれた」「たまたまチャンスが転がってきた」など、外部要因で生じた偶発的な機会も少なくありません。そうした機会をどう捉えるかが主体的なキャリア形成の鍵となります。私を創っていく機会と選択19

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