キャリアガイダンスVol.453
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「共感」と「違和感」。二つが揃って学びは広がるitch的な目標として頼れる存在を見つけることも大切だと思います。―外部だけではなく、学校内のリソースを「機会」として有効活用することに関してはどうでしょうか?古屋自分がいる場所とは社会的文化的に違う環境に身を置くことで学ぶ越境学習(20ページ)という概念がありますが、「違い」は組織の外側だけにあるのではなく、日常空間にも存在します。青山学院大学の香川秀太教授はそれを「日常の越境場」と呼んでおり、学校内部に潜む自分の外側の世界を顕在化できれば、キャリアを考える豊かな機会になると感じます。上田私は国語や探究の授業で「pトーク」というグループ学習を行っていました。ピッチとは短時間で相手の心を動かすスピーチのこと。まずグループ内で90秒ずつ、あるテーマでスピーチしてもらいます。その後グループの代表を決め、全体で発表する。例えば「どんな社会課題に義憤を感じるか」というテーマであれば40人分の社会課題に触れることができ、「あいつ、こんなこと思っていたんだ」とか「自分は人と違うことを感じるらしい」と気づき、自己認識が深まります。学校とは、意見が違う人たちが集う箱のようなもの。他者と交わることで生じる学びの価値を再認識できました。古屋素晴らしい取組ですね。「違いからしか学べない」と言った先人がいますが、私は学びのキーワードとして「共感と違和感」を挙げています。共感がないと「自分には関係ないこと」と流しがちですが、違和感がなければ、「わかるー」で終わってしまう。そう考えたとき、学校はその両方を装着した場所ではないかと思います。高校のクラスって似た属性の人間が集まるため、共感が生まれやすい。一方で上田さんが授業で可視化しているように、実は生徒一人ひとり違う考えを有しているため、違和感が生じることもある。学びが生まれる可能性が高い空間だと改めて感じました。上田的で深い学びが実現できれば、特別なイベントをせずとも意義のあるキャリア教育は実現できると思っています。「他者」と出会う機会でいえば、クラスメイトとの対話もそうですが、教科書や教材自体にも出会いはあると感じています。以前、国語の授業で辞書を使用していたのですが、3年間、真っさらな辞書のままという生徒が大勢いました。どうにかしたいと考えた結果、「この子たちにとって調べるツールとしての辞書は不要でも、言葉と出会うツールにはなるのでは」と思いたち、辞書の中から気になる言葉を選んでもらうワードハントという取組をしていました。古屋ページをめくると、これまで知らなかった言葉との出会いがあるわけですから、まさに偶発性ですよね。上田思えた言葉を皆でシェアしたことで、オリジナルの「素敵な言葉の辞書」が完成しました。結果、語彙力や表現力を高められましたし、言葉を調べるためのツールという、辞書本来の使われ方をされるようにもなったんです。さらに、自分が素敵と感じた言葉の共通項から、自身の興味関心に気づき、進路選択へとつなげていった生徒もいたり、逆に生徒が素敵と感じた言葉学校は授業が命。主体的・対話そうなんです。そして素敵だとの共通項から、教師である私がその生徒の特性に気づき、キャリア支援の際の参考になったり、といったことも。教科教育の中でのキャリア教育的側面を感じた経験でもあります。―ありがとうございます。最後に教師のあり方についてお聞かせください。古屋失敗や悩みも含め、生の言葉を伝える機会をつくってほしいです。高校生のロールモデルになり得るのは、自ら新しいことに挑戦し続けている先生ではないでしょうか。試行錯誤しながら自身のキャリアを豊かにしていこうと行動している姿が、卒業後、多くの機会と選択を重ねていく必要がある高校生に勇気を与えるでしょう。上田私も自分に向き合った結果として出てくる言葉を教師自身がアウトプットすることが大切だと思います。外に発信すれば、それを受け止めてくれる人も大勢生まれます。教師同士、学校同士がつながり、実践を共有し合うことができれば、そして「自分でなんとかしなきゃ」という〝我慢〟を手放し、社会に対して「助けて」と言えるようになれば、学校の力は何倍にもなるのではないでしょうか。教師って子どもたちの未来を創る仕事に人生を懸ける選択をした人たちです。これほどパワフルでイノベーティブな集団はいないと思っています。2025 JAN. Vol.453私を創っていく機会と選択23

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