企画や運営を進めがちです。ですが、生徒たちは中学校までにいろいろな出し物や式典をやってきているので、できることは任せると、結構、生き生きと動いてくれるんです。そうして自分たちで何かを成した経験が、この先も自分で道を拓けるという自信に繋がるように思います」生徒たちのチャレンジやがんばりを発信することも力を入れている。例えば、和光国際高校の海外研修では、希望した生徒がイギリスなどに2週間ホームステイする。新井先生は「普段とは異なる地でサバイバルする」またとない挑戦の機会と思っているので、事前の説明会から力を入れ、個別にも声をかけるそうだ。そのうえで、研修中は生徒の様子を写真や動画に撮り、学校のホームページやSNSにアップしている。 「自分の挑んだことが記録に残り、保護者やほかの人にも見てもらえると、喜んでやる気が増す生徒も多いんです。保護者の方も楽しみにしてくださっていて。そうした発信を通して、まだ踏み出せないでいる生徒たちに、挑戦することの魅力をアピールすることもねらっています」新井先生自身が、がんばっている生徒一人ひとりの「変化に気づく」ことができるようにも努めている。 「Acknowedgement(承認)に関する本を読んだのがきっかけでした。会社員時代にもがいていた自分を思い返しても、承認されることって大事だと思ったのです。定時制高校の生徒たちとの出会いも大きかったですね。自己肯定感が下がっていた子が多かったのですが、クサい言い方かもしれませんが、愛情をもって個々の成長に目を向けていくと、生徒たちがどんどん変わっていったんです」変化に気づくために重視しているのが、担任としての二者面談だ。新井先生は毎学期、面談を行っている。 「面談の機会がないと、『普段から寄ってきてくれる生徒』の変化にばかりよく気づくような偏重が生まれかねません。集団の中にいる時と、1対1の時では、教員に見せる顔が変わる生徒もいますよね。本校には、勉強も部活動もがんばっている、いわば手のかからない生徒がかなりいます。ですが、高校生って、僕もそうでしたが、みんな不安を抱えていると思うんです。何のために勉強しているのか、何を目指せばいいのか、わからなくなったり。そうした悩みを聞き出し、いろいろなことに挑戦しようと背中も押しながら、個々の成長を見守りたいと思っています」ちなみに、かくいう新井先生も、「教員の仕事に慣れてきた今、ここから自分が何を目指せばいいのか、実はすごく悩んでいる」のだそう。「でも人生はそういうものかな、ずっと悩み続けるのかな、とも思います。だから今の目標は、自分にできることを日々一生懸命やることです」して教員免許を取り、私立高校の非正規教員になった。ところが3年で契約を打ち切られる。それでもめげずに、東京都の教員採用選考を受け、合格して中学校に配属された。3年間働いたのち、心惹かれていた高校勤務をするために埼玉県の教員採用選考を受け、現在に至る。 「自分の経験を通して思ったんです。生徒が勉強して良い学歴や経歴を手にすることにも一定の意味はあるけれど、それ以上に大事なことは、学校生活全般で『挑戦することで自分や社会を知る』『粘り強くがんばる』といった姿勢を培うことなのでは、と。そうした姿勢は、どこの世界でも普遍的に通用するでしょうから」だから新井先生は、生徒が自分たちで企画や運営にチャレンジするような場を生み出そうとしてきた。前任校では、定時制の生徒たちに今まで参加していなかった文化祭への出店を呼びかけ、皆でやり抜くなかで自信をつけていく姿を見守った。現任校では、国際教育部の担当として、留学生の受け入れや、生徒の海外研修の際に、相手国との交流の一環となる「歓迎会」「お別れ会」の企画運営を生徒に委ねてきた。また、バレーボール部の顧問として、近隣の中学校のチームを招待する大会を開催。大会運営を生徒たちに任せ、生徒たちがフランス語、スペイン語、中国語で挨拶する場も設けた。 「進学校の生徒の日常は、教科学習が中心で、文化祭や体育祭など一部の行事をのぞけば、ほかの活動は『時間をかけられない』と教員のほうで国l 変化に気づくことで成長を後押ししたいイギリス研修の現地での交流。ホームステイし、自分たちで考えた出し物も披露して濃密に関わるので、帰国の際は別れを惜しんで泣き出す生徒もいるという。あらい・しんたろう●大学卒業後、食品メーカーに入社。3年目に退職し、塾講師、私立高校教員、東京都公立中学校教員を経て、埼玉県公立高校教員に。高校1校目となる工業高校の定時制では、民間企業やNPOなどの外部と連携し、職業人との交流をはじめとするキャリア教育を推進した。2023年より現職。2025 JAN. Vol.453取材・文/松井大助 撮影/澤崎信孝際高校ならではの校務分掌、国際教育部に所属する新井先生。イギリスやオーストラリアの海外研修や、シンガポールの修学旅行の内容を、海外派遣プログラム作成経験のある同僚と考え、現地の学習にも同行している。 それらの活動では各国の人との交流も重視。前任校でも定時制の生徒たちと職業人の交流の場を設けており、生徒に多様な出会いをもたらすように努めている。 現任校では、その出会いのなかで、生徒が出し物の企画などにも挑戦。イギリスの海外研修では、生徒発案で、ソーラン節やダンス、クイズや弾き語り、生け花や書道、英語歌唱などを現地の人と楽しんだ。その主体的な交流のなかで、生徒の視野が広がることを、新井先生は期待している。私を創っていく機会と選択25多様な出会いと別れのなかで生徒のチャンレジを促す
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