□□もらったことは誰かに返し、温かな想いを循環させたいと思っています」まちと繋がることで、「高校生と関わりたい」「出水にいる生徒たちを応援したい」というまちの人々の想いを山下先生は肌で感じた。まちの人と生徒を繋ぎ、その想いとその方々の専門性を循環させるために、山下先生が外部の人を学校に呼んでくると、管理職の先生方も喜んで応援してくれた。招いた講師には全校生徒を対象に講演をしてもらうこともあれば、山下先生の家庭科の授業でワークショップをしてもらうこともある。さらに、地元の企業の人々と共に、放課後に生徒を集めてワークショップを行う部活外活動「SAN楽LABO」(左のコラム参照)も実施。多様な形式で繋がりを広げている。幅広い活動を通して山下先生が意識しているのは、生徒とは上下関係ではなく対等に接することだ。「生徒は仲間です。今は高校生ですが卒業すればすぐ社会人になる人たち。卒業生になればまた一緒に、次世代の生徒のための取組ができるかもしれません。もともと生徒たちは、私が『教える』ことをしなくても、機会さえ与えれば自分たちでやりたいことに気づき、実現する力をもっているのです」それでも答えを欲する生徒もいる。そのときは、「今価値があると思っている答えが未来には変わっていがくを対象にエリア再生のためのビジネスプランを考えるスクールだ。当時、学校の授業が簡単すぎると、いつも寝ていた生徒がいたため、その生徒を誘ってみると興味を示したので二人で参加。ほとんどが社会人で高校生はその生徒だけだったが、とてもいきいきと取り組み、大人の中でも堂々と自分の意見を語っていた。 「まちや社会の大人と繋げることで、生徒が自分の本音に気づきワクワクを見つけられるとわかったのです。私自身もスクールで新たな繋がりができ、講師を学校に呼ぶなど、繋がりが繋がりを呼ぶ循環が生まれました。私の出身地の奄美大島のことわざ『水や山うかげ、人□や世間うかげ(水は山のおかげ、人は世間のおかげ)』のように、人からして学() るかもしれない。だから、今決めた答えが変わってもいい」と伝えている。 「変わってもいいと言われても生徒はモヤモヤしています(笑)。でも、変化していく世の中で生徒たちは自分の人生を創っていかなければなりません。だから、『高校生はたくさんの中から選ぶ練習をしているんだよ』と言っています」多様な大人と繋がりをもち、自身での気づきを促されると、生徒たちの思考や物事の捉え方が自由になっていくと山下先生は感じている。ただし、生徒自身が自由な思考になり、自分の好きなことを見つけられたとしても、進路選択においては保護者の応援がカギとなる。教員が関われるのはわずか3年間。卒業後も生徒にずっと寄り添い続ける保護者と生徒自身の想いのすり合わせも、山下先生が大切にしていることだ。三者面談は生徒と保護者の想いを重ねられるよう、「保護者の次に、2番目に生徒のことを思っている人でありたい」と伝え、本音を言い合える環境づくりに徹する。最終的には保護者から生徒に「がんばりなさい。これからも応援している」という言葉が出てくるという。 「生徒にも保護者に対してもそれぞれ敬意を払い、一人の人として対等に関わり、共に考えることが、教員にできることだと思っています」高校時代は選択の練習期間今の選択が変わってもいい□□「SAN楽LABO」ではまちの人、高校生がフラットな関係のなか、対話しながら共にやりたいことの意見を出し合って運営している。やました・ゆうか●鹿児島県奄美大島出身。小中高と先生に恵まれ教員を目指す。特に、生徒一人ひとりの良いところを見つけ、まちの人にも信頼されていた小学校時代の担任がロールモデル。長崎大学卒業後、奄美高校、大島北高校、鹿屋農業高校、出水工業高校を経て2024年より現職。2019年にキャリアコンサルタントの資格取得。2025 JAN. Vol.453取材・文/長島佳子 撮影/廿浦麻結校の近隣にある企業と連携して、放課後に自由に生徒が集まって地域の大人と交流する場「SAN楽LABO」。きっかけは、「小学校時代の学童のように、放課後に気軽に寄れる居場所が欲しい」というある生徒の声。その声に応え、地域の人々と山下先生が連携して2024年6月に発足。メンバー企業が日替わりで場所を提供し高校生たちは自由参加。そこにいる大人と会話したり、大人たちの知見をいかしたワークショップなどのイベントを開催したりしている。出水市の高校生なら誰でも参加できる。取材した当日も、ある生徒が「家に休眠畑があり、祖母がなんとかしたいと言っている」と話すと、山下先生がすかさず「面白そう!何かできないかな?」と声をかけ、さまざまなイベントのアイデアが生徒たちから繰り出されていた。私を創っていく機会と選択27学校の外で有志が参加する部活外活動「SAN楽LABO」
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