若狭高校(福井・県立) 小坂康之先生宇宙飛行士の野口聡一さんが、高校生が開発製造したサバの缶詰を食べる様子を宇宙から動画配信。そのニュースが舞い込んだのは2020年のこと。宇宙日本食となった「サバ醤油味付け缶詰」を作ったのは若狭高校の生徒たち。初代の生徒たちが取組を始めてから14年が経っていた。その間、生徒と共に歩んできたのが小坂康之先生だ。小坂先生は元々、2013年に統廃合され、現在の若狭高校の海洋科学科として生まれ変わった小浜水産高校の教員だった。サバ缶製造実習は小浜水産高校開校時から続く伝統だったが、より高品質な製品を目指し2006年に国際的な食品衛生基準であるHACCPの取得を進めた。HACCPはNASA(アメリカ航空宇宙局)が宇宙食の開発のために基準を作成した起源があり、そのことを小坂先生が授業で伝えたとき、ある生徒が発した言葉がすべての始まりだった。 「それなら、わしらのサバ缶も、宇宙に飛ばせるんちゃう?」普通の大人なら、生徒たちの荒唐無稽な夢と受け止めていたかもしれない。しかし、目を輝かせていた生徒たちの本気のワクワクに、小坂先生自身が揺さぶられ共感したのだ。そこから学校の統廃合を経て現在も引き継がれている。生徒の気持ちに本気で寄り添い、夢を実現させることができたのは「対話」にあると小坂先生は語る。対話の重要性に先生が気づいたきっかけとなったのが、教員1年目の苦い経験だった。 「生徒たちから『授業がつまらない。先生たちの授業は中学の先生より下手』と言われたのです」授業をろくに聞いてくれないのは生徒たちのせいではなく自分の実力不足だったと痛感。それ以来プリントを工夫したり、体験的な授業を増やしたりすると、寝ていた生徒の8割は起きるようになった。しかし、まだ寝ていた生徒を起こすと怒って教室から出て行ってしまった。すると、リーダー的な存在の生徒が「先生は悪くない。追いかけなくてもいい」と言ってくれた。彼の一言で他の寝ていた生徒も起きて、授業が楽しいと言ってくれるようになった。生徒たちの変化に小坂先生は、彼らは伸びたい、正しい方向に教員と生徒の言葉に揺さぶられ対話によって心を引き出す生徒の心が動いた瞬間を見逃さず思考を深める対話を繰り返していく2025 JAN. Vol.453282007年のプロジェクト発足から14年かけて、先輩から後輩へと想いが引き継がれて完成した宇宙サバ缶。「資格を取れ」、「進学した方がいい」などの先回りした助言は、良かれと思えども余計なお世話。生徒自身の声に耳を傾け引き出したい。生徒たちが何かにワクワクと心が動いた瞬間に共感して、一緒に心から楽しむ。生徒の発言に自身が揺さぶられることも多々ある。素行が悪く見える生徒であっても、人は誰でも今より良く生きたい、良い方向に向かいたいと思っていることを心に置いて向き合っていく。取材・文/長島佳子 14年間の宇宙サバ缶開発が始まり、
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