「興味がない」で終わらせずただ、ちょっと「知りたい」。その先で導かれた選択大3小説家外にある機会浅倉秋成今号のオープニングメッセージ学を卒業したら就職し、安定した仕事に就く――大多数の人が歩む道から外れる勇気が、僕にはありませんでした。子どものころの夢はお笑い芸人になること。小4からの友達とコンビを組み、高3で漫才のコンクールにも出場。しかし、友達が本気でお笑いの道に進む気持ちを固めていくのに反して、僕はそこまでの覚悟はもてなかった。彼と比較し、自分にレールから外れられるほどの才能があるのかと考えると、自信がありませんでした。彼は芸人の道に進み、のちにお笑いコンビ『レインボー』のジャンボたかおとして活躍することになります。 興味のあることを突き詰める性格でしたが、いつからか「自分が『興味がない』と思っていることは、単純に『知らない』だけなのでは」と考えるように。もしかしたら僕はまだ、ほとんど世界を知らないのかもしれない。とりあえず、さまざまな分野の入門編くらいには触れて“いっちょかみ”してやろうと、大学では幅広い分野の講義を取りました。そして大学3年生の時、たまたまシラバスで見つけたのが「文芸創作講座」でした。 講座では、学生が書いた小説を合評します。それまでほとんど小説を読んだことのない僕が見ても、文学科の学生が書く文章の流麗さは見事でした。知らなかった世界との、偶然の出会い。プロになる才能が自分にあるかなんて気にする余裕はなく、ただ、なんだか面白そうだという予感がした。そして「ここにいる講座生40人の中で誰よりも面白い小説を書きたい」と、小説を読み始め、自分でも書くようになったのです。 新人賞受賞の連絡をもらったのは、就職した会社での新人研修中でした。営業職として必死で働き、遅刻もせず、良い成績を残しました。忙しすぎて一文字も書けない生活を経て、会社を辞めたのが2年後。「作家として生きていける」という確信を得たからではなく、余白のない生活に限界を迎えたことでレールから外れた。そして今、作家生活12年を迎えました。 考えてみれば、今の高校生がいる環境は過酷です。ネットには、さまざまな分野で突出した存在がいる。簡単に比較できる環境では、自分の「好き」なんて大したことがないように思えることもある。「誰よりも好きで、才能がある」なんて自信は、そう簡単には得られません。それよりも、自分の知っている世界の外をただ見てみる。面白そうだ、自分はこの分野で伸びるかも、なんて直感を信じて、とりあえずやってみる。そんな“いっちょかみ”精神が、想像を超えた道につながることもあるんじゃないかな。あさくら・あきなり●1989年生まれ。千葉県出身。2012年に『ノワール・レヴナント』で第13回講談社BOX新人賞Powersを受賞しデビュー。2021年に刊行された『六人の噓つきな大学生』は累計65万部を突破し、2024年11月に実写映画化。『教室が、ひとりになるまで』『俺ではない炎上』『家族解散まで千キロメートル』など著書多数。六人の嘘つきな大学生(KADOKAWA)2025 JAN. Vol.453取材・文/塚田智恵美 撮影/川俣満博
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