キャリアガイダンスVol.453
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たら、あえて距離を取って見守る。「教員の目が行き届かないほうが、生徒は自分で考えて行動する」からだ。その外での挑戦が、仮に生徒目線で失敗に終わったとしても、「やってみて課題がわかったなら、それも収穫だよ」と背中を押してきた。 「知らない世界を知っていろいろな考えにふれると、生徒の視野が広がります。日常では接したことのない人と関わるなかで、生徒のもつ良さが引き出されることもあります。外に出ることで巡り合えるそうしたチャンスを体感してほしいのです」こうした思いは、ボランティア部の顧問を長年務めるなかで培われたという。ボランティア部の生徒は、高齢者や幼児と接したり、大人と協働したりと、多様な人と関わる。そこで新たな一面を見せて成長することが多かったのだ。学校でよく注意される生徒が、幼い子と接した時に自然にしゃがんで目線を合わせたのを見て、胸打たれたこともあった。中西先生自身が「外に出る」ことの魅力を感じてきたことも大きい。になり、リーマン・ショックの不況時、生徒の就職先を探して100社前後の企業を回った。企業人の知見にふれ、自らビジネス書を読みあさった。40代後半に、県下に新設される教職大学院の研修に面白そうだと飛び込んだ。学校組織や教育経営について研究し、小中学校の先生とも交わった。そうして外の世界にふれると「見える景色が変わり、未来の選択の幅が広がった」という。トアップしつつ、校内の先生にも「繋がりのある人や繋がりを深めたい人」について1カ月近くヒアリングし、皆の意見を反映して組織化した。その前の商業高校では、コロナ禍にオンライン教育推進プロジェクトを牽引。チーム構成では、ICTが得意で前向きな先生だけを集めるのではなく、苦手意識がある先生にも参加してもらい、異質な集団として多様な意見を出し合って、皆で挑戦できるやり方を模索した。先生が「外と繋がる」ことも後押ししている。自身の人脈を生かして外部の人・団体に学校教育に協力してもらう時、中西先生は必ずほかの先生にも繋いできた。校務分掌や教科の専門性から、協力者と結びつきそうな先生を活動の立ち会いに誘うなどして。以降はその先生が自分の企画でも連携できるようにだ。 「入口は私個人の繋がりでも、『組織と組織の繋がり』にしていきたいのです。外と繋がることで先生方の視野も広がりますし、外部の多様な意見を基に、時代の変化に応じた学校運営を皆で考えるチャンスも生まれます。今の時代はジグソーパズル型でなく、組み立てブロック型だと言われたりしますよね。生徒のキャリアも、学校のあり方も、枠に当てはめるというより、自分たちで形から思い描き、柔軟に創造していくことができたらと思っています」析をしたこともあります。自分の住む地域だから興味をもって進められますし、別の地域に住む生徒たちの発表を聞くことで『ほかの地域とそんな違いがあるんだ』と当事者としての発見を楽しんでくれました」生徒が「外に出る・外と繋がる」ことも積極的に応援してきた。 「がんばっている生徒の興味・関心に合わせて『学校外の活動やコンクール、プレゼン大会の募集があるけど、やってみる?』と声をかけるんです。無理強いはせず、やるかどうかの選択は生徒に委ねます」生徒がやることを選んだら、発表や活動の準備をサポート。校外に出教職大学院修了後、中西先生は、普          生徒だけでなく、先生にも目を向け、組織運営に深く関わるようになった。見える景色が変化して選んだ道だ。関心を寄せてきたのは、「外発的に始まる学校改善を、いかに内発的なものにするか」。取り組んだのは、国や県の方針として導入すべきものを「今いる学校の組織文化に合うようにアレンジして進める」ことだ。主幹教諭を務めた工業高校では、コミュニティ・スクール導入を推進。教育方針を共に考える学校運営協議会のメンバーを、地元有識者などから選出した。その際は、地元の新聞1年分を見返して候補者をリスチャレンジや学びの機会が教員にもたくさんある学校に知らない世界との邂逅が未来の選択の幅を広げる社会人を招いたテーマ発表。外部の協力者から同僚の先生まで、中西先生は関わった人から「気づいたら巻き込まれていた」とよく言われるそうだ。なかにし・みか●前ページ写真中央。大学卒業後、佐賀県の数学科教員に。2018年に佐賀大学大学院学校教育学研究科(教職大学院)を修了、主幹教諭時代に同大客員准教授も3年間兼任した。現任校では教頭として普通科改革を推進、教育活動の柱に据えた探究活動にも注力。前ページ写真は、探究支援部の山口 崇先生(左)と、末松真樹先生(右)と共に。2025 JAN. Vol.453取材・文/松井大助 写真/諸石 信通科改革の一環で、探究活動を軸とするコース制を導入した唐津西高校。校務分掌に「探究支援部」を新設、そのメンバーを中心に企画運営を進めている。中西先生は教頭としてその取組をサポートし、また、組織全体に熱を広げられるように「学年と分掌という縦と横を意識して」個々に働きかけている。 探究支援部の企画で、多様な社会人を招いて生徒がテーマ発表した際は、学年団の希望を基に人集めで協力。22人も集まり、担当教員から「楽しみになってきました」と言われ、それが嬉しかったという。 学校の異動や立場の変化で、やることが変わる教員という仕事。今自分に求められていることは何かを考え、「置かれた場所で咲くことができたら」と中西先生は言う。私を創っていく機会と選択3140歳で農業高校の進路指導主事探究活動を軸とする学校改革を組織全体に広げようと邁進

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