キャリアガイダンスVol.453
35/66

助者としての課題を適切に自己評価し、その課題に主体的に取り組むこと──まさにこれがスーパービジョンのプロセスです。その最終目標はスーパーバイザーという外側の存在なしでも、自分で自分に気づきを促すような問いを発したり、どうやって乗り越えていこうかと自分で考えたりできること。つまり自己対話によって自分自身にスーパービジョンができるようになることなのです。難しく考える必要はありません。日常的に、ご自身を振り返る習慣をもつことをおすすめします。日記のように、日々の進路指導について記録しておくのです。このとき生徒のことを記録するだけではなく、ご自身の「感情」(そのときどう感じたか)「思考」(どう考えたか)などの「気づき」をメモしておくといいでしょう。大事なのは、時間をおいてからもう一度そのメモを見返すことです。少し客観的な目で読み返してみると、いろいろな気づきがあるでしょう。「今の自分の視点」では、何を感じ、どのように考えるでしょうか。もし当時とは異なる感情や考えを抱いたとしたら、なぜこのような違いが起きたのか、ちょっと考えてみてください。同じことが起きたら、次はどのように対処するか、目の前の生徒をどう理解し、どんなふうに声をかけるのか。今なら、違う言葉をかけるかもしれません。その言葉をかけたら、生徒からはどんな言葉が返ってくるでしょうか。このように問いかけ、考えてみるのです。これが自分でできるセルフスーパービジョンのプロセスです。l.vo446本連載ではこれまで、現場の先生方にご登場いただき、先生方が進路指導で悩まれたケース、壁にぶち当たったケースを詳しくお聞きしてきました。そして「このような生徒の場合、どのように指導すればよいのか?」と事例検討するのではなく、対話を通じて先生がご自身の思い込みや価値観に気づいていかれる様子を、誌上でご覧いただいてきたと思います。例えば連載初回(ーチューバーになりたいと言い出した生徒」を前に悩む先生と対話しました。最初は「生徒がユーチューバーになりたいと言い出したこと」を問題と捉えていた先生でしたが、対話を通じて「一時の流行に乗って生徒が大変な目に遭うのではと心配になってしまい、なぜ生徒がそう言い出したかなど本人の思いを聞けていない」というご自身の課題に気づかれました。不安定な職業を目指すと言われると、つい不安が先立ってしまい、生徒がなぜそのようなことを思ったのか、に目が行かなくなる。そんな先生ご自身の課題に目を向けてみたうえで、あのとき生徒とどう向き合い、どんな言葉をかけるべきだったかと考える。こうした振り返りを行うことで、次に似たシチュエーションが訪れたときの生徒への向き合い方が変わってくるはずです。どう指導すべきかの正解を求める依存的な態度から脱却して、みずからの援)では「突然ユ自分に問いを与えて自分で考えられる力※「スーパービジョン」という手法。事例をもつカウンセラー(スーパーバイジー)と指導者(スーパーバイザー)で行う。2025 JAN. Vol.453追手門学院大学心理学部教授。カウンセリング心理学専攻。大阪大学大学院人間科学研究科博士前期課程修了(学術修士)。スーパーバイザーなどとして活躍。2023年5月まで日本キャリア・カウンセリング学会で理事・SV委員長を務めた。取材・文/塚田智恵美撮影/平野 愛      「対話を始める」では、三川先生がスーパーバイザー(指導者)、現場の先生方がスーパーバイジー(相談者)となり、事例を基に先生方自身の課題について対話してきました。今回は、自己対話によってスーパービジョンを行う方法について三川先生にご解説いただきます。カウンセリングの領域では、カウンセラーが自身の担当する個別のケースについて、専門家や指導官に話し、自身のカウンセリングの過程や問題点を振り返ることで、より良いカウンセリングのあり方を模索する手法があります※。この連載では2年にわたって、キャリア・カウンセリングの専門家である三川先生と現場の先生方の対話を通じて、現場の先生ご自身が「より良い進路指導のあり方」を考えていく様子をレポートしてきました。最終回は一人でもできるスーパービジョンの方法についてお伺いします。35追手門学院大学心理学部教授三川俊樹先生 監修&アドバイス

元のページ  ../index.html#35

このブックを見る