キャリアガイダンスVol.453
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自分が思う「良い生徒」の価値観。これら非合理的な思い込みの存在に気づくと、自分の思い込みを少し脇において、直接対峙している子どものことを理解しようと向き合い始めるはずです。すべては「気づく」ことから始まるのです。振り返るときの注意点として、真面目で完璧主義な人ほど「できていないこと」ばかりに目が向きがちな傾向があります。私が指導している学生にも、理想や目標に向かってがんばっているからこそ「こうあるべき」という理想をゆるめられない人がいます。しかし「できていないこと」ばかりに目が行くと行き詰まることが多いです。少し俯瞰して見れば、やれていること、当たり前にできていることが必ずあるはずです。否定的な面ばかりに目を向けるのではなく、手応えがあるところに目を向ける。振り返りの方法も、「できているところ」に目を向け、ありたい姿に近づいていけるようなプロセスを取り入れていけるとよいでしょう(次ページ「対話のキーワード」参照)。先生方が自分自身の良い面を評価するようになると、ひいては生徒に対しても、できているところや良い面を見られるようになっていくと感じます。ぜひ先生方も日常に振り返りを取り入れ、セルフスーパービジョンをなさってみてください。進路指導を行う先生方は、援助者の立場です。援助者自身にどのような期待や思い込みがあるか、どのような価値判断を行っているか、みずから自己点検することはとても大切だと私は考えます。臨床心理学者のアルバート・エリスは、人間の不安や悩みの背景に「イラショナル・ビリーフ」(非合理的な信念・思い込み)があることを指摘しました。例えば「仕事で失敗をしたから、自分は役に立たない人間だ」という考えも、よくあるイラショナル・ビリーフの一つです。客観的に見れば仕事で失敗したとしても、自分を全否定するまでもないのは自明のことですが、本人はあたかもそうだと思い込んでいる。するとストレスが高まり、うまく行動できなくなります。自分がどのようなイラショナル・ビリーフをもっているか、自分で「気づく」ことで、理にかなった考え方や行動に「修正」していくことができるのです。以下に、教員という立場で抱きがちなイラショナル・ビリーフをまとめました。「すぐれた教員でなければいけない」といった自身の仕事に対する思い込み。または非合理的な思い込みに気づくことから始まる2025 JAN. Vol.45336 教員自身の価値観や指導のあり方について、日頃から自己点検することが生徒の向き合い方につながっていきます。ここでは過去の「対話を始める」の内容もふまえ、教員が陥りやすい非合理的な思い込み(イラショナル・ビリーフ)の例を紹介します。ご自身に当てはまるものがないかチェックし、あったら「本当にそうだろうか?」と考えるなど、振り返りにご活用ください。     当てはまるものがあれば、ご経験を振り返ってみてください。▼本当にそうだろうか?例外はなかったか? 自己理解がないと先には進めない? 目標がしっかり定まらないと、何もできない? 自分のしたいことすらわからない生徒には、 進路指導はできない? 進路意識がはっきりしないまま進路決定をすると、 あとで必ず後悔する? 生徒の自主性・主体性を尊重すると、 収集がつかなくなり、とんでもないことになる? 教師は生徒の将来の成功を、 確実に保証してやらねばならない? 生徒は未熟で社会のことを知らないのだから、 教師がしっかりと指導すべきである? 生徒を自立させるためには、あまり教師が手をかけたり、 援助してあげるのはよくない?

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