何に違和感を抱くか。それこそが「個性の発露」がゼロになったことも。でも、そのとき私はワクワクしたのです。「そうか、この道は私が行く道ではないんだな。別のやり方を考えよう」 自分の欲求や願望を純粋に磨き、貫いていけば、自分にとってより良い手段や人間関係につながるはずだと、ふしぎな確信がありました。提供するプログラムの名前は「夢の架け橋」。周防大島と本土をつなぐ大島大橋のように、自分らしい未来や夢に向かって橋を架けて進んでいける子どもたちになってほしいという願いを込めています。私にとっての起業家教育は、精神的にも経済的にも自立して「自分の技」で生きていく力を育てることです。その究極のスタイルが起業ですが、会社に勤めたり専門職に就いたりする生徒たちにも必要な力だと考えています。では自分の技で生きていく力は、どうすれば育つのか。大切なのは、何かを〝身につける〟こと以上に、純度の高い自分を〝取り戻す〟ことではないでしょうか。私たちは生きていく過程で社会性やルールを身につけ、それと同時に、素直な違和感をなかなか口に出せなくなっていきます。周りの価値観が自分のなかに流れこんできて、子どものころの「好き」や「自分にはこれが向いている」という直感は薄まっていく。しかし、素直な違和感こそ、その人の個性が発露する瞬間です。「おかしい」「納得できない」といった違和感の根底には必ず、その人のこだわりや「好き」「気になる」という思いが隠れています。し、ほかとは違う純度の高い私――「ジブン」になっていく。純度の高いジブンを貫きながらも、他者と協働する方法について先輩起業家の背中から学ぶ…。公教育の先生方と共にそんな場を創れたら、若者がワクワクしながら自分の個性や才能を発揮して生きられる島につながっていくはずだ。そんな仮説が私にはありました。だからこそ、私の提供するプログラム内では、ことさら「地域のために」とは強調しないようにしています。まずは、誰の目も気にせずジブンのしたいこと、得意なことに気づき、極めていく。ジブンという領域が満たされたとき、そのジブンを育てた地域へと、おのずと矢印が向くだろうと考えたのです。は、すでに大学を卒業して就職しています。県立大学で地域活性化の勉強をし、これからUターンして起業したいと相談に来ている人、公認会計士になって地域の企業を支援している人、大学卒業後は周防大島で教員になりたいという人や、地元の活性化というテーマで郵便局を就職先に選んだ人など、地域とつなげて進路を考える子が増えています。それぞれのジブンの花が咲き、若者が地域で生き生きと働けるようになり、そして、この大好きなふるさとが100年続いていく。その未来を描いて、「純度の高いジブン」を大切に育てていきます。本来の自分そのものの状態を取り戻起業家教育を始めたころの生徒たち2025 JAN. Vol.453□ 周防大島で起業した人たちの夢に焦点を当てて創刊した「島スタイル」。A5版・4ページのフリーペーパーで、地域のパン屋さんなど身近な人たちを取り上げた。取材対象者が尽きて全14号で休刊に。□ 周防大島町の小・中学校のほか、他県の高校・大学でもキャリア教育の講師を務める。研修や講演は年間100回程度という。教室や会場に集う人々の心を動かす、教科書・ワークブックのデザインも好評。12 Uターンしてからの一歩目は、起業家を取り上げるフリーペーパーの創刊。しかし、あっという間に取材対象者が尽きて継続できなくなる。その経験があったから、起業家の育成そのものに携わりたいと「教育」に目が向いた。子どもたちには「地域のために」とは強調しない。まずは「ジブン」のしたいこと、得意なことを知り、「ジブン」という領域を満たしていく。その結果「ジブン」を育てた地域へと、おのずと矢印が向くだろうと仮説を立てた。47
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