キャリアガイダンスVol.453
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「思考力・判断力・表現力の向上」の3点を指標としている。23年度はいずれの項目も約95%で、全日制全体や専門学科の平均値を上回った(図6)。進路状況に目を向けると、昨年度の卒業生は約25%が大学進学、約8%が専門学校等進学、約64%が就職している。就職先の企業にはNTT東日本、清水建設、三菱電機など日本有数の大企業が並ぶ。そのなかで、テクノロジスト(技術職)の育成を目指す同校が注目するのは、企業名より職種だ。大企業の技能職や公務員の仕事内容は技術職に近く、それを含めると就職者の約96%は技術職だという。進路指導では、生徒が希望する職種が研究・開発職の場合は大学進学、技術職や技能職の場合は就職を基本としている。技術職を目指すなら工業高校から直接就職するほうが家庭の負担も小さく近道の場合が多いことから、安易に大学進学を選択することは推奨していない。近年、生徒の進路意識に変化が感じられるという。 「『この会社・大学に入りたい』ではなく『この仕事がやりたいからこの会社・大学に入りたい』と、より具体的なイメージをもって進路選択する生徒が増えてきました。独自の職種分類を基本に、仕事の現場を身近に感じる経験を重ねているからこそではないでしょうか」(栗山先生)「その理由は何だろう?」と問いをもち、工業高校の魅力を追求してきたことが、さまざまな改革につながった。現在、全学科で入試倍率が定員を超えている。 「本校の実践が生徒の希望や期待に合致してきた、一つの表れでしょう。ただし10年後もこのやり方が通用するとは限りません。今後も社会の要請に対応して変革を続けていきます」(川上先生) 「『技術立国日本』が過去の言葉になりつつある今こそ、工業高校は日本の産業を担う人材を輩出するという使命感をもって大胆な変革を行う時です。本校は我々の意識から変えようと取り組み、ここまでに数年かかりました。時間がかかりますが、学校は変わることができる。そう信じて、常に時代を見てより良い学校にしていきたいと思います」(宮城先生)同校の取組からは、工業高校の担う役割の重要性と可能性の大きさが伝わってくる。また、社会への接続を強く意識したキャリア教育の実践は、すべての学科の参考になりそうだ。くという。その先には、現在の学科の枠を越えた教育の実現も見据えている。 「コンソーシアムなどを通じて仕事の現場を目の当たりにし、もはや一分野の知識やスキルだけで問題解決できる時代ではないことを痛感しています。専門性を複合的に組み合わせて対応する人材を育むために、学科間のあり方についても考えていきたいと思います」(川上先生)こうしたSTEAM教育の方向性に誤りはないか、生徒の満足度と進路状況で評価を行っている。生徒の満足度については、県が実施する生徒アンケートの「学校に対する満足」「社会的・職業的自立に必要な能力の習得」同校は数年前まで定員割れしていた。工業高校としての使命感をもち社会に合わせた改革を継続生徒の満足度は95%前後進路選択の動機が具体的に令和5年度実施「魅力と特色ある県立高校づくりについてのアンケート」(神奈川県教育委員会Webページ)より※「満足している」「どちらかといえば満足している」の合計2025 JAN. Vol.453各班の課題研究の内容にも、企業のメンターからアドバイスをもらう。次世代建築リーダー育成コンソーシアムの講座で清水建設施工物件を見学。「AIチャレンジ」の活動で、P-TECH参加企業とオンラインでミーティング。● あなたが通っている学校に満足していますか。● 高校生活での「キャリア教育」により、中学生の時よりも社会的・職業的自立のために必要な能力が身に付いたと思いますか。● 高校生活において、課題の発見と解決に向けて主体的に考えたり、発表しあうなどの協働的な学習活動を行うことによって、中学生の時よりも思考力・判断力・表現力を高めることができたと思いますか。小さいころからものを作ることに興味があり、情報技術を含め幅広く学べるところに魅力を感じて電気科に入学しました。今がんばっているのは「課題研究」です。AIを活用して会議の議事録を作成するシステムをテーマに、既存サービスにはない機能を付けられないかと取り組んでいます。AI議事録をテーマにしたきっかけは、放送部の部長をしていた僕自身の悩みです。部活内のミーティングで司会進行を行い、その内容を議事録にまとめて全部員にLINEで情報共有する作業を面倒に感じ、AIを使って何かできないだろうか?と考えました。研究のプロセスでは、企業の方がメンターとして技術面のアドバイスや社会人としての視点を下さり、とても参考になっています。また、将来働くイメージが具体的になりました。周囲に具体的な目標をもっている友達が多いのも、早い段階から社会とのつながりを意識して学んでいることが大きいと思います。(電気科3年生・伊藤貴史さん)90.4%89.1%94.4%88.6%90.3%95.2%90.3%90.5%93.2%       図6 生徒アンケート結果全日制全体専門学科神奈川工業高校全日制全体専門学科神奈川工業高校全日制全体専門学科神奈川工業高校Interview53社会を意識した学びで、将来のイメージが具体的に

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