教科書のトピックを読み(聞き)、考えたことを英語で書く(話す)という学習をするにあたり、生徒たちの実生活に結びつくような「英語を使う目的・場面・状況」を設定しているのも、授業の特徴だ。例えば、ポイ捨て対策のアイデアにふれたトピックの学習では、地元の富士山のゴミ問題を最初に確認。「国内外から人が訪れる富士山の五合目であなたが働くなら、ゴミ問題にどう対応する? プレゼンを聞いて考え、発信しよう」という設定の下、教科書のトピックの音声版のリスニングに生徒たちが挑んだ。ポイ捨て対策として英語で語られたのは、次の三つの独創的なゴミ箱だ。①ゴミを入れると、底なしのように落下音が何秒も続き、最後にゴンッと音がする、ユーモアで人を引き寄せるゴミ箱。②ゴミ箱に二つの選択肢が示されていて、タバコの吸い殻で投票できる、意見を表明したくなる人間の欲求を利用したもの。③カメラと車輪を備えたロボット型ゴミ箱で、ゴミを見つけると止まって待つので、人が拾って箱に入れてあげたくなる、他者を助けたい本能を利用したもの。生徒たちはこれらの内容を、パートごとに、田中先生の発問や、ワークシートの発問を起点に「思考しながら英語を聞く」ことで、段階的に把握していった。1回目のリスニングで全体を大まかに捉え、2回目はキーワードを耳でキャッチして詳細まケーションⅠの授業。教壇から田中知聡先生が英語で問いかけると、生徒たちがしばし沈黙することが何度かあった。たかもしれないが、それだけではない。生徒たちはこれまでに、教科書を「思考しながら読む・聞く」ことを、図1や図2のような手法でくり返してきた。田中先生の問いは、その経験を活かして頭を回転させないと答えられないものが多く、つまりは思考するために押し黙ったのだ。いと思う?」「なぜそう思うの?」と問われたけれど、自分はどう思うのだろう。自分はこうだとして、「誰にとっては」を考えたらどうか。あるいは「どういう場面か」で判断が変わることはないか。取りにも挑戦し、他者の視点にふれることでさらに考えを広げていった。が掲載されています。生き方や文化、自然科学、環境問題など。その教科書を使って学ぶ英語の授業は、生徒がこの社会で起きていることにふれて考えを深める絶好のチャンスだと思っています」それが田中先生の英語の授業だ。山梨県立甲府昭和高校の英語コミュニ英語が聞き取れなくて、という生徒もい学習中のトピックに関連して「これは良考えをめぐらしたあとは、隣り合う生徒同士で、図3のような英語によるやり「英語の教科書には、いろいろなトピック教科書を基に、生徒が自分のことから、他者や社会のことにまで目を向けていく。英語の目的の達成を目指して英語4技能を使って考える英語の教科書は社会に開かれた窓でもある2025 JAN. Vol.45356大学院修了後、中学校教員を経て、高校の教員に。生徒が思考しながら読む・聞くことを「発問」で促す授業や、生徒の「自己表現活動」を取り入れた授業などを推進。共著に『主体的・対話的で深い学びを実現する! 英語授業の発問づくり』(明治図書出版)、『英語教師のための文法指導デザイン』(大修館書店)などがある。取材・文/松井大助 撮影/鈴木友樹
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