身近なことの質問からも社会に目を向けていくでつかむ、といった具合に。最後に田中先生が改めて英語で問いかけた。「富士山のポイ捨てを減らすのに最も効果的な手法はどれだと思う?」と。生徒は各自で考えをまとめ、隣同士で議論もしたうえで、自分の意見を理由付きで手元のパソコンに英語で入力した。書き込みはオンラインで即時共有され、先生やほかの生徒がコメントや「いいね」で反応することもできる仕組みだ。ある生徒は、音のするゴミ箱がいいと考えた。どの国の人でも言語の違いを越えて楽しめるからだ。別の生徒も音のするゴミ箱を選んだ。でも選出理由は違い、言葉がおぼつかない幼い子にも響くことに着目してだった。ある生徒は、投票できるゴミ箱を推した。国内外から多様な人が訪れる富士山なら面白い投票結果になりそうだから、と。自分の好みではなく、「誰にとっては」「どんな場面か」と広い視野で、社会にも目を向けて考えたことがうかがえる内容だ。生徒たちはその多様な意見にふれることや、自分の意見に反応がつくことも楽しんでいた。すか」と切り出した生徒もいた。田中先生は歓迎し、新しいゴミ箱をクリエイトしてもいいことを全体にも共有した。「実は最初は『四つ目の案を考えてもいいよ』と私から伝えようとも思っていたんです。でもそうすると、私の期待を生徒が察知してしんどくなりそうで、言い出してくれるのを信じて待っていました」になり、生徒から出てきた問いを中心に考えていく活動も予定している。具体的には、生徒にとって身近なこと、例えばコンビニエンスストアや音楽について、まずはALTや同級生に聞きたいことを自由に考える。次にそのテーマで「誰にとって〜は良いことか」「〜すべきだと思うか」という価値観や判断を問う質問も考える。「コンビニが遅くまで開いているのは良いと思う?」などと。身近なことについて質問を考え、英語でやり取りするなかで、社会のあり方にまで自然に目が向くようにした取組だ。「小・中学校を経てきた高校生は、成長の過程からしても、多くのことを吸収できる時期にいます。自分のことから、他者のこと、地域社会のこと、広く世界で起きていることにまで目を向けて、その社会で自分はどういうふうに人生を歩みたいかも考えてほしいと思っています」書き込む前に「違う案を考えてもいいでこの先の授業では、生徒が質問する側教員によるサポート口頭やワークシートで主題や登場するものを問う「〜するために読もう(聞こう)」と目的や場面を設定話の核心に迫るためのキーワードや事実を問う読んで(聞いて)理解したことを各自が絵に描いて比べるなど遊び心ある取組も入れる「〜は良いと思う?」「〜すべき?」などと、生徒の考えを問う生徒同士でお互いの考えを英語でやり取りするよう促す図1 「思考しながら読む・聞く」のレベルを3段階で深める図3 やり取りで考えを深めるプロセスを学ぶ57図2 さまざまな思考の仕方を学ぶ理解するために読む・聞く表現するために話す・書くときに使える思考 考えを広げる社会に目を向けるときに使える思考これらの思考を生徒は一度に学ぶのではなく、教科書の内容に応じて、田中先生が「事実と意見を分けよう」などと、有効な思考の手法をレクチャー。段階を踏みながら、さまざまな思考の仕方を身につけていく。※ダウンロードサイト:リクルート進学総研>> 刊行物>> キャリアガイダンス(Vol.453)生徒同士のやり取りでは、左のようなプロセスの対話を促し、互いの違いに気づいたり、考えを深めたりしていけるようにしている。上の水色のシートは、英語のやり取りの基本表現を、表裏2ページにまとめたもの。「相づちを打つ」「発言を確認する」「質問する」「考えを引き出す」「賛否を問う」「理由を述べる」などよく使う表現が列挙されている。生徒同士の英語でのやり取り。ワークシートの発問も活用して自分なりに考えてきたことを、隣同士で共有し、視野を広げる。2025 JAN. Vol.453・ 「どういう場面か」を考える (場所や状況による変化)・ 他者とやり取りし、 異なる視点を得てまた考える○ 自己と結びつける・ 「自分はどう思うか」を考える○ 他者や社会に目を向ける・ 「誰にとっては」を考える (異年齢、外国人など)・ 全体を捉える・ 自己と結びつける・ 概要・要点を捉える・ 詳細を捉える・ 自己と結びつける・ 思考しながら読む・ 自己と他者の視点を知る聞く反応する考える話す反応を見る・聞く考える話す・聞く○ 時系列で捉える○ 原因と結果を捉える○ 比較する・対照する○ 事実と意見を分ける○ 意見と理由を考える○ 具体例を考える
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