護師として大学病院で18年間勤務したのち独立し、訪問看護ステーションを立ひとつ壁を乗り越えていきました。病院勤務時代は、目の前の患者さんをより良くすることが、自分にとっての課題でありミッションでした。それが、経営する立場になって変わりました。利用者さんやご家族のことを第一に考えるのは同じですが、その先にある社会課題に目が向くようになり、会社の存在意義を考えるようになったんです。誰もが適切な場所で適切なケアを受けられるようにするためには、地域の医療インフラの整備が不可欠です。この課題に対して、「訪問看護」というリソースを提供することが私たちの役目です。そして、私たちが事業活動を通して目指しているのは、住民が安心して暮らせるまち、住みたくなるまちです。そんなまちにするには、医療の前段階として健康を保つための介入も必要だよね、高齢者だけでなく次世代をつくる子どもたちへのサポートも大事だよね…と課題への関心はどんどん広がっていきました。そして、高齢化の進む団地のまちおこしなどに携わるなかで、さまざまな人と出会い、つながりが生まれ、志を共にする仲間が増えていきました。今、私の目の前には、学生時代にも病院勤務時代にも想像していなかった世界が広がっています。今後やりたいことの一つが、子ども食堂を軸にした「まちの保健室」をつくること。看護師や管理栄養士に気軽に健康相談ができて、夜は高齢者向けの居酒屋にもなる、そんな場所を構想しています。ち上げました。現在は、現場でスタッフが判断に迷った際に指示を出したり、うまく処置ができないときにサポートに入ったりと、現場で働く看護師たちをバックアップしながら事業所の経営をしています。訪問看護に初めて興味をもったのは、看 看護学生時代のこと。実習で在宅看護の現場に伺い、人工呼吸器をつけて生活されている方を見て、 「医療現場=病院」という固定観念が覆されました。同時に、患者さんや家族の暮らしに密着した看護があることを知り、自分もいつかやってみたいと惹かれました。卒業後は、医療の最前線で看護師としての経験を積みたいと考え、大学病院に就職。神経内科、がん治療センター、集中治療室などを経験し、中間管理職も務めました。忙しい日々を送っていましたが、コロナ禍で会議や研修といった業務がなくなり時間ができたことで、自分の今後のキャリアについて考えるように。ふと浮かんだのが、「訪問看護をやってみたい」という学生時代の純粋な思いでした。しかし、18年間積み上げたキャリアもあり、訪問看護ステーションで新人スタッフとして働くという選択肢は現実的ではなく、それならば働く場所を自分でつくろうと起業を決めました。経営の知識も身近に起業の事例もなく、まさに手探り状態でしたが、一つ2025 APR. Vol.454あさくら・ゆきもと●1981年生まれ。認定看護管理者。栄養治療専門療法士。NST専門療法士。東海大学医学部付属病院勤務を経て、2021年に訪問看護ステーションを起業。現在は看護師のほか理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士が所属し、在宅でのQOLを高めるトータルケアの提供を目指している。取材・文/笹原風花 撮影/島袋智子職業観イメージを超える職業観15Five Star訪問看護・栄養管理Station 代表取締役・管理者・看護師朝倉之基さん私の仕事は、看護師です。
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