キャリアガイダンスVol.454
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企業での主体性の評価はどのよ調査報告の図9の解説でも取り上げた社会人基礎力として必要だと先生たちが考えている「主体性」。社会における「主体性」とは具体的に何を指すのか、企業への綿密な調査と取材で研究をしている、武藤浩子先生にお話を伺いました。―企業が求めている主体性とは何かについて教えてください。実は、企業が求める「主体性」の意―         められます。この「発信」とは、周り味は、ここ20年間で変わっています。以前は、「主体的に行動する」ことが求められていました。しかし、現在では、主体性は「思考力」や「協調性」と結びつくようになりました。従来の手法では通用しない、変化が急速な時代になり、多様な視点をもった人たちがそれぞれに考え協働しなければ課題が解決できない社会になったことで、主体性の捉え方も変わったと考えられます。複数の研究から見えてきた企業が求める「主体性」の意味を図10に示します。主体性は、「自分なりに考える」ことが起点となります。自分なりに考えたら、必ず「発信する」ことが求の人に話す、ミーティングなどで発言するといったことです。さらに「発信」した結果、周囲の人たちと「仕事に関して協働する」ことまでつなげられて初めて「主体性」と認められることがわかりました。一方、学校では「主体的な学び」が重視されています。同じ「主体性」という言葉を使っても、学校と企業では主体性の捉え方が異なっているのです。―企業が求める主体性について、高校ではどこまでをどのように育んだら良いとお考えですか。高校で取り組んでいただきたいのは、生徒が授業のなかで「自分なりに考える」という経験を積み重ねることです。さきほど述べたように、「自分なりに考える」ことは主体性の起点です。自分なりに考えることもなく、主体性を発揮しようとするのは無理な話でしょう。我々教員は、日々の授業で、「生徒が自分なりに考える時間を十分に確保しているのか」ということを意識する必要があると思います。また、生徒が自分なりに考えたことを「発信する」ことも重要です。「自分なりに考える」は内的活動のため、他者が(たとえ教員であったとしても)これを正しく読み取ることはできません。そのため生徒自身が「発信する」ことが必要になります。例えば、ペアで話す、グループで話す、文章を書くなどさまざまな活動が考えられます。総合的な探究の時間でも、このような活動に取り組むことができるでしょう。企業の人へのインタビュー調査からわかったのは、「社員が発信しない」ことを大きな問題として捉えていたことです。高校で「自分なりに考える」「発信する」ことができれば、社会に出てから主体性を発揮するための準備になると考えています。うに行われ、主体性があるとどんなメリットがありますか。企業では、複数の上司によって主体性が評価されています。また、主体的に仕事をすることで、仕事に面白さを感じ、上司や同僚とのタテヨコの関係を築くことができ、結果として、成長にもつながっていきます。―総合的な探究の時間では、生徒が主体性をもって取り組めるような課題を見つけることに難しさを感じる教員が多いです。生徒が「好きなこと」だけに絞ってしまうと視野が狭くなりがちです。それよりも「これはちょっと変だと思う」「ここがモヤモヤする」というものの方がよいと思います。スタンフォード大学のクランボルツ教授が提唱した「計画的偶発性理論」が、予期せぬ偶然の出来事の重要性を示唆しているように、最初はほどほどの興味であっても、オープンマインドで取り組むうちに面白さを発見し、主体的に取り組めることもあります。好きなこと探しだけでなく、生徒たちのモヤモヤを引き出す問いかけが、それぞれの主体性を育むことにつながるのではないでしょうか。早稲田大学 教育・総合科学学術院 非常勤講師 武藤浩子さん企業が求める「主体性」の意味図1047※武藤先生の著書『企業が求める〈主体性〉とは何か:教育と労働をつなぐ〈主体性〉言説の分析』の図を基に編集部にて作成。※赤字の「仕事」は学校教育においては「課題」に置き換えて考えるとわかりやすい。むとう・ひろこ●早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。大学教育学会・学会奨励賞受賞(2021年度)。東京大学高大接続研究開発センター特任助教を経て早稲田大学非常勤講師。著書に、企業の主体性を具体的に明らかにした『企業が求める〈主体性〉とは何か:教育と労働をつなぐ〈主体性〉言説の分析』(東信堂)がある。2025 APR. Vol.454

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