キャリアガイダンスVol.454
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永井荷風は長崎を「円形劇場」と表現しましたが、長崎市街地はすり鉢状の地形をしており、長崎港を中心とした商店のあるエリアが「舞台」、斜面に連なる住宅街が「観客席」のようになっています。つまり平地の面積が限られているので、商店のあるエリアがぎゅっと密集して、他に広がらなかったのです。回ることになります。車移動と違い、歩くことで人と人との会話が生まれる。さらに、その狭い地域に歴史や異国の文化が詰まっている。この構造に気づいたとき、生まれ故郷を見る目が変わりました。コンパクトだからこそ、長崎は面白い。このまちに自分も関わりたいと思うようになったのです。研究所/nullを設立。長崎のまちづくりについて友人と研究を始め、まちを歩き、気づいたことをブログやライブ動画で発信するようになりました。感じたのが「斜面地」でした。長崎といえば坂が多いまちとして有名ですが、車が通れない道もあるなど住むには不便が多く、人口減が進んで、空き地や空き家も増えていました。課題が多いものの、その分、可能性も大きいのではないか。この斜面地を資源ととらえて、若者たちのアクティビティの場として使用できれば、土地の所有者にとっても草刈りなどの管理コストを削減することにつながるのでは。そう考え、斜面地を農園として活用する、坂と農園で「さかのうえん」のアイデアを思いつきました。2010年に「長崎市若者のまちづくり施策提案制度」を使って研究に取り組み、長崎市長にプレゼンテーションすることに。ところがアイデアは高評価だったものの、実現には至りませんでした。正直「いいアイデアなら、なぜやってくれないのだろう」とがっかりする気持ちがありました。それでも、まちづくりに携わりたい。その思いで、大学院修了後、長崎市役所に勤めることにしました。予算と権限をもつ公務員だからこそ、まちに対してできることがあると思ったからです。しかし、がっかりは続きます。「まちづくりがやりたいです!」と言って入庁したのに、配属されたのは土木の部署だったのです。ただ、任された仕事をひとまず一生懸命やってみると、少しずつ自分の考えが変わっていきました。一見まちづくりに関係ないように見える仕事も、実はまちのデザインや人の暮らしと密接につながっていて面白い。また、市民ワークショップを開催する機会があり、ここでまちに関わるさまざまな市民の立場や思いを知ったことが、自分の視野を広げるきっかけになりました。次第に私は「いいと思うから、やりたい」だけでは事はなせない、ということに気づいていきます。私たちは一人では生きられず、他者との関係のなかで生きている。人にはそれぞれ立場があり、事が動かな狭いからこそ、住む人はまちを歩いて大学院に通いながら、長崎都市・景観まちを歩き回るなかで、特に面白いと「がっかり」の先で得た気づき2025 APR. Vol.45452      

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