キャリアガイダンスVol.454
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場や出会い、交流、体験…プレゼントを見つけて渡していときには、それなりの理由がある。何かをしたいと思うのなら、関わるさまざまな人たちの立場を理解しつつ「私からは、その人たちに対して何をプレゼントできるだろう」と考えていかなければ…。そう思うようになっていったのです。そのうちにまちづくりの部署に異動になり、平日は市役所の職員として、休日はnullの所長として、まちづくりに携わることになりました。2010年にプレゼンテーションして実現しなかった「さかのうえん」の企画は、意外な形で実現しました。2020年、知人が密集斜面市街地である中新町に移住したことで、自治会の方々との関係が深くなったのです。自治会長に「こんなアイデアがあったんですよ」と話したところ、中新町の空き地で「さかのうえん」を実現できることになりました。荒れ果てた空き地に若者など幅広い年齢層の人が訪れ、人の手が入った畑に戻していく。次第に「この土地も『さかのうえん』に使ってもらえないか」と依頼を頂くようになり、中新町内に4カ所のさかのうえんを開くことに。現在は5カ所目のオープンに向けて準備中です(2025年2月取材時)。さかのうえんを始めるときは、近隣に住む方のお宅に必ず挨拶に行きます。地域に育ててもらったような人間ですから、じいちゃん、ばあちゃんたちとの会話が大好き。時には、さかのうえんで収穫した作物を差し上げることもあります。先日もたくさん採れた芋を「良かったら持っていってください」と置いておいたところ、あっという間になくなっていました。近隣に住む方々や自治会の協力なくては、さかのうえんはできません。作物をお分けするのも、関わってくださる方々に少しでもプレゼントを渡したい、という思いからです。例えば高齢者にとって草刈りは「負担」ですが、体を動かしたい若者たちにとっては「レクリエーション」というプレゼントになります。普段出会わない人との交流、新しい経験、知らなかった絶景との出合い…。見方を変えれば、プレゼントになりうるものは、世にあふれています。地域の人たちが喜んでくれることを考え、そうした機会や場を積極的につくっていくことも、まちづくりを進めるためには欠かせないのではと私は考えています。域の架け橋となる〝関係〟案内所としてのネオ観光案内所「HUBs繁華街の空きスナックを再生した「まちづくりスナック・ニューシグナル」など、さまざまなプロジェクトに取り組んでいます。かつて「小さなまち」の魅力が感じられずに飛び出した私ですが、今はこの「小さなまち」だからこその可能性をたくさん感じています。一人ではできないことを、みんなと。これからも、このまちを楽しみ尽くしていきたいです。ii12       Ishbash」や、プレゼントとは〝もの〟には限りません。現在はさかのうえんに加えて、人と地2025 APR. Vol.454□ 長崎市独特の斜面を生かした「さかのうえん」。坂の上という立地柄、農園からは長崎港や市街地が見渡せる。教育活動にも活用されており、隣接する地域の高校や大学と連携し、授業や部活で使用されることもある。□ 長崎居留地エリアには魅力的なコンテンツがたくさんあるが、情報発信不足が課題だった。そこでネオ観光案内所「HUBs Ishibashi」をオープンし、観光案内に加え、セルフ喫茶やイベント開催などを展開。生まれ育ったまちの外に一度出たことで、地方都市における商店街の衰退を実感。「では、なぜ長崎では商店街が賑わっていたのか」と問いが生まれ、地形などの景観とまちにおける人の流れが密接に関係していることに気づく。市役所職員として働くことで、まちに関わる多様な人たちの立場や考えを知る。行動を起こす際に、関わる人たちの立場を理解しつつ、その人たちにとって「プレゼント」となるものや体験、場をつくろうと心がけるようになった。53

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