2025 APR. Vol.4541914年神奈川県立第二横浜中学校として開校。1950年横浜翠嵐高校に改称。全日制/定時制普通科。初代校長の言葉に由来する「大平凡主義」をバックボーンにした自由で個性尊重の教育方針の下、県有数の進学校として知られる。神奈川県教育委員会指定の学力向上進学重点校。2024年度、74人(現役67人)の合格者を出すなど、近年東京大学合格者数において全国公立高校の上位をキープ。かとう・しゅんじ/1963年生まれ。横浜国立大学大学院教育学研究科修了。教員人生前半は、生徒指導や国語の授業力向上、ラグビー部指導に注力。後半は、神奈川県立横浜栄高校教頭(開校準備)、湘南高校定時制教頭(単位制導入)、商工高校副校長(新しいタイプの専門高校)、横浜国立大学教育学部附属横浜中学校副校長(国立中学校と県立高校の連携)、平塚中等教育学校副校長(中高一貫)として高校改革に携わる。新羽高校校長、麻生高校校長を経て2022〜2024年度横浜翠嵐高校校長。まとめ/堀水潤一 撮影/安達貴之 本校のミッションは、国内外を問わず広く社会に貢献する「真のトップリーダー」を育てること。単なるトップリーダーではありません。人の痛みがわかる、心優しき人間になってほしい。それは勉強よりも大事なことだと全校集会や学校説明会で言い続けています。学校行事や加入率90%以上の部活動で切磋琢磨し、思い通りにいかない経験もしながら豊かな人間性を養ってもらいたいのです。 一方で、難関国立大学合格という保護者や生徒の希望にも応えなくてはなりません。そのため、例えば土曜講習の時間は、公式戦以外は原則部活動禁止にするなどの制限も設けています。仮に生徒や顧問がやりたいと言ってきても首を縦には振らないでしょう。私の教育観とは異なるところもありますが、本校には結果に対する期待や、県の学力向上進学重点校を牽引する使命もあるのです。目指すは「日本一の公立高校」になること。決して進路実績だけを指すものではありませんが、東京大学の合格者数を意識していることは否定しません。こうした目標に抵抗感をもつ学横浜翠嵐高校(神奈川・県立)55校関係者はいます。それでも掲げるのは、学校経営方針をわかりやすく伝え、ベクトルを合わせるため。明確な目標あってこそ物事は動きます。それを実感したのは、30代最後に1年間経験した、保険会社の営業本部への企業派遣でした。毎日全国99支社から届く契約数の報告を管理する業務を通じて、シビアな現実を知るとともに、数値目標の重要性を認識しました。教育者でありながら経営者的な視点が加わったのは、このときです。 とはいえ本校の授業は、詰込み型ではありません。「生徒の心に火をつける授業」を合言葉に、グループワークを積極的に取り入れた「主体的・対話的で深い学び」や「探究学習」に力を入れてきました。コロナ禍においても、生徒が学びを止めず自立・自走したのは、早い段階で心に火がついたからだと思っています。生徒の心に火をつけるためには、先生方の心に火がついている必要がありますが、そこは安心しています。本校の教員は皆、授業研究に熱心で、進路指導でも生徒に親身に対応します。ただ、自分の考えをしっかりともった教員も多いだけに意見が食い違うこともあります。そこを一つにまとめるのが校長の役割であり、そのとき大切なのが、これまで述べてきたような学校経営方針です。 校長の方針を浸透させるために、日頃からコミュニケーションを取るよう心掛けていますし、校外での会議が長引く日も必ず学校に戻るようにしています。教職員からあがってきた起案も、待たせることがないよう、できる限り早く決裁することを心掛けています。 働き方改革も進めていますが、生徒の心に火をつける授業づくりは労力がかかり、まだまだ課題が多いのが現実です。それでも生徒が成長し、第一志望の進路実現という結果が出たときは報われる瞬間。先生方の「やりがい」ばかりに頼ってはいけませんが、少しでも働きがいのある職場にしていきたいです。教育者でありながら学校運営で欠かせない経営者的視点先生方との関係づくりを通じて生徒の心に火をつける
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