行機、東京タワー、もぐら。同じ形を無限に敷き詰められる「パターン」の中に、生徒たちが思い思いの題材で絵を描いていく。用意された10種類近くのパターンから、各自が好きなものを選び、画用紙に転写、その形の中で好きなように表現する美術の授業だ。彩りを工夫した生徒もいれば、あえてモノクロにした生徒、線の太さにこだわった生徒もいた。「大事にしているのは、生徒一人ひとりが『自分の感覚や記憶』から発想を引き出し、のびのび自由に表現することです」「社会構造が急速に変化し、予想もしなかった問題が起こる可能性が高まった昨今は、新しい視点から問題を発見し、創造的に問題を解決することが求められています。ですが、AIの登場で情報が平均化して行き渡るようになった今、人と違うアイデアを出すのが難しい時代でもあります。だからこそ創作活動を通して、自分が美しい、価値があると感じるものを深く見つめ、光る宝石の原石となるものを見つけてほしいと思っています」キャンしてデジタルデータにし、エコバッグにアイロンプリントして使ってもらうそう。そこまでするのは「美術は生活の外側にあるのではなく、身近にあるもの」と感じてほしいからだという。猫、ひまわり、パンプキン、たい焼き、飛高松東高校の西澤智子先生はそう語る。授業で仕上げたパターンデザインは、ス自己表現だけでなく、「他者への思いや社会への視点から発想を広げる」ことも行う。ポスター制作では、他者からの見やすさや受け止められ方を意識して生徒が情報をデザイン。粘土から楽器のオカリナを作る工芸では、使用する人の持ちやすさも意識して、造形美を考えた。「アートは、自己表現をどんどんやる創作。一方、実用性を備えるデザインは、他者にとっての使いやすさなど、条件があるなかで面白いことを考える創作です。美術で両方に取り組むことが、『独自性があり他者への共感もある創造性』を育むことになり、社会の問題を解決する力につながると考えています」(図1も参照)美術の授業で培ったノウハウを、西澤先生は探究学習にも応用している。高松東高校では、2年生が自分たちの自己表現と他者への共感その両方に美術で取り組む美術の手法を生かして創造的かつ現実的な探究を2025 APR. Vol.45456芸術大学を卒業後、美術の中学校と高等学校教諭、特別支援学校教諭の免許を取得し、香川県の教員に。2019年より休職して大学院に進学し、専修免許を取得。現在は博士課程に在籍し、創造性教育を実践と理論の両面から追いかけている。専門は日本画で、画家としても活動。公共施設や美術館に作品を寄贈しているほか、文芸誌や児童文学の挿絵も担当している。パターンの敷き詰め方は、Webでも公開されている教材で学習。用意されたパターンではなく、自作のパターンを考案した生徒もいた。取材・文/松井大助 撮影/杉原 歩 パターンデザイン
元のページ ../index.html#56