いう。保育をテーマに探究したあるグループは、図画工作の教材が皆で同じモノを作るものばかりだと気づき、その違和感を基にNPOや企業への聞き取りを実施。革やガラスなどの廃材を利用して、作り手が自由な組み合わせで創造できる教材を考案し、試作品で小中学生や同級生の使用感も確認、企画書にまとめあげた。学校の外での多様な人との関わりが、生徒の創作熱を高める効果も感じている。「外部の人から褒められたり期待されたりすると、より良いものを創ろうと『背伸び』するんです。教員が下駄をはかせるのではなく、生徒が背伸びしたくなるような環境を今後も目指したいです」背伸びしたい気持ちが膨らむように、美術の授業で心掛けていることもある。「美術の授業の醍醐味は、一人ひとり違った表現となる創作を、その過程から見取れること。『この子は発想が面白いな』とか、『この子は形を捉えるのが得意だな』とか、個々の特性をできるだけつかみ、本人にも言葉で伝えながら、その強みをより発揮しやすくするための知識や技法まで届けていけたら、と思っています」次第に自分の創作に没頭していく。そんな姿を見ると、西澤先生は嬉しくなる。興味なさそうに授業に出ていた生徒が、前任の高松工芸高校では、生徒たちが美術で培った視点をもって社会の問題解決に挑むことに、どんどん前のめりになった。例えば、課題研究であるグループは、選挙権年齢引き下げ時に感じた自分たちの戸惑いを起点に、選挙や政治を楽しく学べるカードゲームを創作。地元の小学生に遊んでもらって改良も重ねた。こうした活動は、美術を専門に学ぶ生徒でなくても可能なはず。異動により普通科の高松東高校に着任してからも、西澤先生は美術の視点を生かした探究を促した。すると同校でも生徒が創造的問題解決を楽しんでくれるようになったと感じたことを大事にしながらより良い創造を目指すように発想を広げる技法の一つ、はちのすノート。現在、西澤先生は創造性教育を科学的に分析することも進めている。他者が見たりさわったりできるものを制作できる美術の強みを生かし、①社会問題の解決案となるプロトタイプ(試作品)を「創る」、②他者にふれてもらって効果を「確かめる」というサイクルをくり返す探究活動に挑む。クラスや学校、社会などについて、生徒が抱く理想と、現実とのギャップを捉え、「もっとこうなってほしい」と思うことをポスターやロゴマーク、提案パネルなどで表現。自分の願いを起点に、社会に参画する意識も育む。左より2年生の谷本 吟さん、久本達也さん、野中綾羅さん、有松那菜さん視覚、聴覚、触角などの五感で刺激を受けたことから、イメージを膨らませて造形することに生徒が挑戦。美しい、価値があると感じたことを言葉で説明できるようになることも目指し、美術の活動を通して自分を深く見つめる。2025 APR. Vol.454創作や創造的な問題解決では「目指すことの実現に必要になる知識や技法を自分で判断し、獲得しようとする」ことを評価すると明示。そのうえで生徒一人ひとりと相談しながら、材料や道具の準備、環境整備でサポートする。 自分の興味や強みを起点に助言をもらってさらなる成長を――印象的だった美術の授業を教えてください。谷本さん 好きなものを題材にした彫刻です。スマホから音符が浮き出たものを作り込みました。野中さん 学校の作品展向けに作ったデジタルの絵です。構図を工夫して好きなものを描きました。有松さん 船がテーマのポスターです。下調べを入念にしてから、魅力が伝わるよう制作しました。久本さん 防犯ポスターです。どんな犯罪があるか調べたうえで、ネット犯罪を題材に描きました。――授業で成長したと思える部分はありますか?有松さん 前から好きな創作を、計画的に進められるようになりました。自分の作品を「センスいいね」と先生が褒めてくれたのも嬉しかったです。久本さん ポスター制作から自分が興味ある建築まで、やりたいことに沿って先生が助言をくれて。周りの意見を取り入れる大切さを学びました。谷本さん わからないことは信頼できる人に聞くことが大切だと思うようになりました。先生からは「制作が丁寧」とも言ってもらえています。野中さん 作品展の運営などで、なぜか先生から仕事をよく振られて(笑)。創作だけでなく、人と関わる部分でも成長できたのかな、と思います。生徒INTERVIEW59・ 自分の五感でキャッチした「美しい」「面白い」「価値がある」「もっとこうなってほしい」と感じたことを深く見つめて、掘り下げて、アートやデザインの創作に生かしてほしいと思っています。・ 「創る」「確かめる」をくり返すことで、他者や社会への理解を深めながら問題解決する力も育みたいです。自身の違和感から社会問題を捉える実制作しながら創造的な問題解決知識・技法を主体的に獲得身体感覚を伴う造形活動
元のページ ../index.html#59