キャリアガイダンスVol.457
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自己表現の場ではなく「協力プレイ」と捉えたら会話のしんどさが消えた「協働」の会話吉田尚記人3ニッポン放送アナウンサー今号のオープニングメッセージと話すのが苦手な“コミュ障”。店員さんと話すことを考えると、服を買いに行くのも面倒なくらい。できれば一日中、人に会わずに、漫画やアニメに没頭していたい―。そんな私が「選考タイミングがほかの職種より早いから、とりあえず受けておこう」と軽い気持ちで受けたニッポン放送に内定をもらい、アナウンサーになってしまいました。 新人のうちから、いきなりラジオ番組を担当することに。毎回、初対面のゲストを迎えます。会話がうまく進まず、絶望的な空気になる日も。「世界一絡みにくい」と言われたこともありました。 ただ、改めて考えてみると、多くの人が「コミュニケーションは、本来できて当たり前のもの」と思いすぎているような気がします。だから、メディアで活躍するコミュニケーションのプロや、プレゼンのうまい人を見て「あの人たちが本能的にできることが、自分はうまくできない」と後ろめたく思ってしまう。“元来できるはずのもの”と思うと、うまくいかないことが苦しくなりますが、“そもそも練習が必要な類いのもの”と考えれば、少し楽になってきます。 では、何を目指して、どんな練習をすればいいのか。新人時代の私が目指したのは、ひとまずゲストコーナーの20分前後自分も相手も気まずくならない状態でした。コミュニケーションとは自己表現ではなく、参加する人がお互いに力を合わせて行う、協力型のゲームだと捉え直したのです。であれば、何も自分が喋り上手になる必要はありません。相手に長く喋ってもらえば楽しいし、会話も続く。聞き上手、質問上手になる練習をすればいい。 質問とは、相手へのパスです。例えば、ちょっとしたテクニックですが、天気の話だって「質問形」にすればパスになります。「寒くなってきましたね」と言えば「そうですね」で会話が終わりますが「寒くなってきましたね。もう冬物は出しましたか?」と質問形にすれば、会話は続いていきます。 大事なのは、相手に興味をもつこと。そう言うと当たり前のように思うかもしれませんが、コミュニケーションを問題なく行うことに集中するあまり、相手に興味をもてなくなる人も多いのではないでしょうか。ひょっとしたら先生方のなかにも、生徒さんのちょっとした言動に「えーっ? なんでそう思うの?」「そんなことが好きなの? いつから?」と新鮮に驚く先生もいれば、毎年高校生に接しているからこそ、その驚きや「?」が最近なかなか出てこない、と感じていらっしゃる先生もいるかもしれません。同じ人間は一人としていない。そんな根本に立ち返り、相手に興味をもつこと。そして、話しかける勇気と、うまくいかなくてもいちいちへこまない精神力。これらがあれば、あとは練習で何とかなる。それが私の思うコミュニケーションです。何とかなると、案外楽しいものですね。よしだ・ひさのり●1975年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒業。2012年に「第49回ギャラクシー賞」で「DJパーソナリティ賞」を受賞。マンガ、アニメ、アイドル、デジタル関係に精通し、ラジオやアナウンサーの枠にとどまらない活動を行う。2025年4月から東京大学大学院 情報学環・学際情報学府 社会情報学コースで学んでいる。2026 JAN. Vol.457取材・文/塚田智恵美 撮影/吉永智彦

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