他者との関係性のなかで互いの変容を促すからだを使った「人を好きになる授業」□□ 「自分に集中的に興味が向いている生1学期のテーマは一対一の関係をつくること。2人1組で、お互いの指先で箸を挟む、背中合わせで立ち上がるなど、からだを使ったワークを行う(図)。徒も多いので、まず意識の向きをクルっと変え、他者を発見することが必要。言葉によるコミュニケーションスキルのじるかもしれないが、やってみることが大切です。人はいろんな顔を使い分けて生きていく。その引き出しを増やしてほしいと思っています」授業の後半は、各グループに「かぐや姫」や「浦島太郎」などの昔話が指定され、1分半の即興劇をつくった。ストーリーがあやふやな部分は情報端末で調べて補い、セリフや配役は自分たちで話し合って決める。制作と練習に与えられた時間は30分程度。動きが止まっているグループは見当たらない。最後はグループごとに劇を披露。全身を使って役を演じる生徒たちに、緊張感や固さはあまり見られない。独自にアレンジした展開やセリフに、観覧者からどっと笑いー。ー。 声が上がることもしばしばだった 「ストーリーや演技ではなく、答えのない問いに向かってみんなでつくるプロセスに意味があります」(兵藤先生、以下同)同校の生徒は6〜7割が不登校経験者で、外国籍の生徒も多い。「人が怖い、人目が怖いと言う生徒たちが、1年間の授業を通じて、人を好きになることができたら大きな前進になるのではないか」。その思いで兵藤先生が実施している「リベラルアーツ国語」は、「聞く・話す・間□をつくる」という3つの領域を学ぶ授業だ。 「『間をつくる』とは、人と人が単なる情報を送受信することではなく、別の考えをもった人同士がジャズセッションのように共振するようになるイメージです。生徒たちは社会に出たら、多様な人と協働していくことが求められます。学校は今、そんな社会とのギャップを埋めていく取組をしていく必要があります」兵藤先生は顧問として同校演劇部を何度も全国大会に導くなかで、演劇レッスンが生徒の行動変容を促すことを確信した。そこから、「演劇のプロがいなくても教員ができる、演劇を用いた授業」を目指し、生徒の成長を促した演劇レッスンを編み直して「演劇表現」という選択科目を作った。さらに多くの生徒に提供するため、昨年度、必修科目として「リベラルアーツ国語」をつくり、兵藤先生は毎時間指導案をつくり国語科の教員5人と実施している。刈谷東高校昼間定時制の3・4年次に、週2時間設置されている学校設定科目「リベラルアーツ国語」。ある日の授業を見学した。最初に実施したのは、「役割を決めて話し合う」というワーク。4〜5人のグループになり、じゃんけんで、積極的に意見を言う「イノベーター」、意見を調整する「調整役」、みんなを励ます「モチベーター」の役割を割り振る。提示されたテーマ「担任の先生を驚かせて喜ばせるにために何をする?」について、各自が役割を意識しながら話し合う役割を設定するねらいについて、担当する兵藤友彦先生はこう話す。 「本校には、3つの役割いずれの経験もしてこなかった生徒がいます。人を不快にさせないよう忖度し、話し合いの場に息を殺して『そこにいるだけ』。『自分はこういう人だから』と諦めてきた。だから無理矢理にでも役割を試してみてほしいのです。意外とできるかもしれないし、自分には合わないと感刈谷東高校(愛知・県立)与えられた役割で話し合いに参加してみるまず、意識の向きを他者へ向けることから34右:授業前半、役割を決めた話し合い。この日話した「担任の先生を驚かせて喜ばせる」というアイデアは、後日クラスみんなで実行する予定。下:授業後半の即興劇の発表。発表時間が余ると「あと10秒ある。つなげて」と兵藤先生。生徒はアドリブで演技を続けた。「リベラルアーツ国語」を開発した兵藤友彦先生。全国各地での出前授業も実施している。2026 JAN. Vol.457取材・文/藤崎雅子
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