キャリアガイダンスVol.458
21/67

れるのかもしれない。これだけAIが普及した今、必要な「考える力」とは何だろうか。村田先生は「許せる/許せないの基準が分かれたのも、接している生徒の学力や環境が違うからなのでは」と語る。「思考が苦手な生徒には、AIの回答を足場にして考え始めることも『考える力』を育む一歩になる。一方、ある程度自力で思考できる生徒は、アウトプットの質やスキルを高めるためにAIを使う。個に応じて、考える力の段階や意味合いは違うのかなと思った」(村田先生)鈴木先生は「これからは、考える力以上に『決断して行動できる力』が重要になると思う」と述べた。鰐川先生も「家庭科は答えがない教科。多様性の時代で、結婚するか、子どもをもつかなど、自分自身で選んでいく必要がある。その『選ぶ力』こそが、考える力なのでは」と語る。安宅先生は、能力のパラダイムシフトが起きていることを指摘する。「『考える』こと自体を再定義しなければならない。『論理的思考力』はもはやベースであり、どう決断するかが上位に来ている」(安宅先生)AIが提示する選択肢から「どうし       たいか」を選び取り、決断し行動する力。そしてAIにはない「共感」や「人間らしさ」を込める力。「考える」という言葉の解像度が少しずつ上がっていく。じている。安宅先生は探究の思考を「U」の字の形に喩えて危惧を口にした。「探究には、深く潜り本質と向き合い、抽象化を経て、自分なりの答えを出す、Uの字を描くような思考プロセスがあります。しかしAIを使うと、思考が直線を描き、ショートカットしてもっともらしい答えにたどり着いてしまうような気がする」(安宅先生)効率良く正解に辿り着けるからこそ失われる、寄り道の価値。鰐川先生は探究の授業での事例を紹介した。「ラーメンを栄養学の観点から探究していた生徒が『一から出汁を取りたい』と、かつおや煮干しから出汁を取り始めました。そんなことをしなくてもAIで知識は得られたかもしれません。でも、発表では8割の生徒が、その子のアウトプットが面白かったと投票しました。寄り道の結果、人の心を動かすものが作れたのではないでしょうか」(鰐川先生)安易なショートカットを防ぎ、試行錯誤を経験するにはどうすべきか。鈴木先生は意図的な寄り道のステップを提案する。「直線的になりがちなテーマでも、反対意見を入れて分岐させるなど、考えるステップを意図的に作ることが重要です。深掘りの練習として、まずはAIに『この意見を批判して』と聞く工程を挟むのも、有効です」(鈴木先生)AIと共にある教育現場では、あえて立ち止まらせたり、分岐させたりする体験の設計力が、より求めら論理的思考力はもはや前提「選ぶ力」「動く力」をAIで思考が直線化する生徒と寄り道できる生徒の違いは2026 APR. Vol.45821A I 時 代 の 「 考 え る 力 」を ど う 育 む か

元のページ  ../index.html#21

このブックを見る