キャリアガイダンスVol.458
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翻って学校教育は、ギリシャ時代の概念を用いるなら、今なお時間割に沿った「クロノス」(量的・物理的な時間)に支配されています。しかし、真の学びや質の高い探究は、時間が経つのも忘れて没入する「カイロス」(質的・主観的な時間)の中にあると思うのです。その点で生成AIは、マニアックな興味をどこまでも深掘りする手助けをしてくれるなど、従来のたてつけでは難しかったカイロス的な学びを実現可能にします。私自身、若いころから枠にはまるのが大嫌いでした。映画やパソコン、音楽創りなどの趣味に夢中で、好きなことだけ追求していたら、コンピュータ、マルチメディア、インターネットの隆盛もあって、今の専門に繋がりました。最近まで40台のシンセサイザーをMacに接続し、自室は配線まみれ。「なぜ40台も。性能が違うのか」と聞かれると、答えに窮してしまいます。というのも、今や実機なしでも1台のコ感が薄れます。AIの出す回答を鵜呑みにするとしたら、それは「学びのオーナーシップ」の放棄と言えるでしょう。私のライフワークである「オープンエデュケーション」についても触れさせてください。米国の教育シンクタンク的な研究財団で私は、世界中の先生方がもつ教授ノウハウや暗黙知をテクノロジーの力で分析・見える化し、デジタルメディアやネットを通じて共有する研究開発に携わりました。知の開放と共有のムーブメントによって、今や世界中で2万以上のオンライン講義が公開されています。ただ、誰もがいつどこでも学べる理念こそ崇高ですが、ある意味で投げっぱなし。高名な教授が授業を公開したからといって、直接質問するわけにはいきません。ところが生成AIの登場で、これらのオープンな講義・教材が再び花開こうとしています。コンシェルジュのように個別最適化された学習支援が24時間可能になるわけでワクワクが止まりません。ンピュータ上であらゆる音を創れるからです。それでも、物への執着というか、スイッチを押し、つまみを回す幸福感は何物にも代え難いのです。デジタルが進化したとはいえ、たかが数十年。人間の身体が順応するにはあまりに短い時間です。     ついでに言うと人間とAIの最大の違いは肉体の有無ですよね。人としての存在意義を意識するようになってからは毎朝腹筋を千回するようになりました。どんどん話が脱線しますが(笑)、こうした逸脱こそ人間ならではとも思うのです。ロジカルな思考はAIに任せ、我々人間は、より非体系的で非直線的な思考や、理屈を超えた閃きや偏愛が求められるのではないか。遠回りに感じても、あるとき点と点が繋がってくるのではないか。幸い、私の勤務先の京都大学には変人と呼ばれる教授がまだまだ残っています。デジタル技術を使いこなしながらも、未開のジャングルを切り拓く野性味を残した〝デジタル・バーバリアン〟たる思考を、教育の世界でも大切にしていきたいです。クロノス的な学びからカイロス的な学びの世界へ生成AIの登場で再び花開くオープンエデュケーション2026 APR. Vol.45829いいよし・とおる●1964年生まれ。国際基督教大学、同大学院教育学研究科を経て、フロリダ州立大学大学院博士課程修了。Ph.D.(教授システム学)。カーネギー財団知識メディア研究所所長、東京大学大学院情報学環客員教授、マサチューセッツ工科大学教育イノベーション・テクノロジー局シニアストラテジストなど、20年近くの在米生活の後2012年に帰国し京都大学に。高等教育研究開発推進センター長・教育担当理事補等を歴任。コンピュータ利用教育学会(CIEC)会長。専門は教育イノベーション・高等教育システム。A I 時 代 の 「 考 え る 力 」を ど う 育 む か

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