苦手に感じていたりすることだ。「生徒が主体的に学び、学ぶことが楽しいと思えるようにしたい」やや戸惑った。黒板に向かって机が並ぶ、数十年前と変わらない教室の風景。「1対多数の一斉学習より、1対1や個別最適の学びのほうが、生徒の興味関心、意欲は高まりやすい。先人の研究者たちはそう言い続けているんですね。この環境に甘んじていいのかな、と思ったんです」いるバラエティトークショーのような授業を目指した。生徒から出てきた意見を広げて、話をぐるぐる振って別の意見も引き出し、題材についてさまざまな解釈を皆で楽しんだうえで、受験に備えて基本の見方も押さえる、というように。現任校では、勉強に苦手意識をもつ生徒がより多く、作り込んだワークシートを基に、まずは個別に作業して「自分で答えにたどりつく」取組を優先した。そこに生成AI普及の波が押し寄せる。岐阜県では、教育委員会が生成AIによる添削システムを導入し、これを活用する学校を募集した。早野先生は関心を示した若手の先生たちと一緒に手を挙げ、保護者の同意も得て、授業に取り入れた。志望動機を書く授業に、生成AIの添削を活用すると、生徒から相談があった。「ここ、AIに『ました』を『ます』に直されとるやんか。おかしくない?」話し合ってみると、AIが『前文との時制の一致』を図ったのに対し、本人は『前文の主張の理由付けの文』にしたかったことが見えてきた。AIに生徒が疑問を呈し、教員の自分がその課題を一緒に考える。そのことに、わくわくした!早野先生の「教師に対する思い」は、なるまでのあいだに二転三転した。高校生のときは「教師になって部活動に関わりたい」と思っていた。自身の高校生活がソフトテニス部一色だったからだ。だが、後回しにした勉強のために2年間の浪人を経験すると、考えが変わる。苦手だった勉強をやるほど知識がつき、世界が広がり、「教師だけに進路を絞らず、民間企業も含めて自分を最大限生かせる道に進みたい」と思うようになるのだ。教育実習を経験した後もその延長線上にいた。勉強への拒否反応が強いクラスで、常にうつ伏せの生徒と関わり続けた。最後に「先生だけは見捨てんかった」とお礼の手紙をもらい、感動した。でも、それ以上に暖簾に腕押しだった日々が堪えて、「教師は続けられない」と思う。民間企業に就職しようと分析を始めた。「他人の作ったものを売るのは身が入らなそう。自分で質のよい商品やサービスを作り、反応ももらえる仕事がいい」。そこで、はたと気づく。教育実習では「自分の授業の質が低かったから、よい反応を引き出せなかったのではないか」。もう一度、教師を目指したくなった。そのためには「もっと学ばなあかん」と自覚した。だから大学院に進み、国語教育や学習理論を研究した。教育の課題を考えるうちに、どの学校でも、生徒から教員までが同じことに悩んでいると思うようになった。大半の生徒が、勉強を嫌々やっていたり、そうした思いをもって、教員になった。教員になってからは、現場の学習環境にできることを探り、前任校では、司会の近づいたり離れたりしながら教師のあり方を考えて目の前の生徒が楽しく学べる環境を54校訓は「あかるく さとく たくましく」。2025年度より、月に一度水曜日を午前授業にし、午後は生徒が自ら選択した活動をする「不破ウィーク」を実施。学校企画への参加も家族や友人との団らんもできるようにし、生徒の主体性を育んでいる。2026 APR. Vol.458早野先生の作成したワークシートに挑む生徒。ネットや生成 AIを使って「自分で答えにたどりつこう」と奮闘し、学びも深めていた。個人ワークだが生徒同士の相談もOK。話に花が咲き、時間内に課題を終えられなかったら、自分の責任で遅れを取り戻すのがルール。創立1950年普通科生徒数180人(男子98人、女子82人)進路状況(2026年3月卒業)大学8人、短大8人、専門学校10人、就職36人、その他0人 勉強に苦手意識のある生徒でも挑戦したくなるような授業を化学大野貴也先生──早野先生とはどんな関わりがありますか。 生徒の進路で連携しています。早野先生が進路指導主事で、僕が3年の担任だからです。早野先生は、志望動機の作成を国語の授業でしてくださって。おかげで担任の添削量が減りました。生徒は生成AIも使ったわけですが、AI 任せでなく、『自分のことを上手に表現する』ための道具として使えていたと思います。──早野先生の授業の取組で共感していることや、見習いたい点などはありますか? 共感しているのは、下にそろえる授業ではなく、生徒の個々の力を伸ばす授業をされていることです。本校には勉強を苦手とする生徒が多いですが、とはいえ得意教科のある生徒もいます。授業で簡単なことだけ課すのは良くないと思うのです。自分の担当する化学の授業でも、自信のない生徒向けの基礎の課題と、そこは理解した生徒向けの応用の課題を用意し、基礎にじっくり取り組んでもいいし、応用に挑んでもいい形で進めています。 ただ、僕はまだ生徒に「やらせる」感じ。早野先生の授業を見学したら、生徒が生成 AIを使って自分からやる気になっていたんです。生徒のやる気を引き出すのが本当にうまい。その姿勢を真似ていきたいと思っています。不破高校(岐阜・県立)INTERVIEW・教科を越えたつながり
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