かけは偶然やなりゆきだったとしても、今「ここにいる」と自ら選び、日々の生々しい葛藤や喜びと向き合いながら教壇に立っていらっしゃるはずです。なぜ自分はここで教員をしているのか。ご自身の「ここにいる意味」を言語化し、ぜひ生徒たちに語ってあげてください。意思のある大人の背中を見て、自 分だけの「納得解のレール」を作り始める―。こうした経験の蓄積が、生徒たちが将来どこへ行こうとも、いずれ自分の意思で地域へと関わっていく「ローカルキャリア」の出発点となるはずです。地理学者であり文化人類学者でもある川喜田二郎氏は「ふるさととは、子どもながらに全力傾注して創造的行為を行った場所のこと」と語っています。つまり、ふるさとというのは、単に「生まれた場所」や「育った場所」を指すのではありません。子ども時代に、自分の意思で、全力で何かに取り組んだ場所。受け手ではなく「作り手としての経験」が蓄積された場所が、結果としてその人にとっての「ふるさと」になるのです。ということは、いくら大人が地域の魅力的な情報をシャワーのように浴びせても、本人が受け身の状態のままでは、本当の意味での地域への愛着やシビックプライドは生まれません。私自身、愛知県の出身ですが、生まれ育った地元よりも、自分の意思で飛び込み、意思をもって活動してきた釜石市や青森市に、よっぽど強い愛着をもっています。だとすると、若者が地元に残らない、あるいは帰ってこない理由は、地元の良さを知らないからではありません。「そこが彼らにとっての『ふるさと』になっていないから」なのです。地域探究学習などで、大人が誘導して地域の良さを教え込んでも、残念ながら地域への愛着は育ちません。その人自身の意思が発揮されることが、何より大事なのです。では、生徒たちが主体的に地域に関わっていくための「最初の一歩」として、どんな機会が必要でしょうか。生徒の「意思」は、選んでそこにいる大人の生き様に触発されることで芽生えます。だからこそおすすめしたいのは、先生ご自身が「この人の生き方は面白い」「この人の話なら、自分の生徒にぜひ聞かせたい」と心から思える、意思をもった地域の大人と、生徒たちを出会わせることです。こう話をすると、多くの先生方から「うちの地域には、そんなロールモデルがいない」というお悩みを聞きます。しかし、華々しい実績をもつ人や、大きなプロジェクトを立ち上げたリーダーのような人でなくてもいいのではないでしょうか。生徒に会わせるべきは「今、ここにいること」を自分なりに意味づけしている大人です。「自分はこの地域から出られないのだろうな」と嘆くのではなく、目の前の仕事や暮らしに、自分なりの意味をもち、肯定できている人。「なぜ、自分はここにいることを選んだのか」「どんな葛藤を抱え、それをどう咀嚼して今を生きているのか」を、飾らずに自分の言葉で語れる人です。そうした大人の迷いも含んだリアルな話こそが、生徒の心に深く刺さり、「ほう」と目を輝かせる瞬間を生み出します。そうした大人を見つけるには、『笑っていいとも!』のテレフォンショッキング方式が有効です。同僚の先生方に声をかければ、少なくとも一人くらいは「意思をもってこの場所で生きる、地域の大人」を知っているはずです。その人に会いに行ったら、さらにその人から別の人を紹介してもらいます。面白い人の周りには、面白い人が集まっているものです。そして、忘れてはならない存在があります。日々生徒と向き合っている先生方ご自身もまた、「意思をもってそこにいる大人」の一人です。赴任のきっ選んでそこにいる人の背中「意思をもってそこにいる大人」との出会いが、心に火をつける生徒に会わせたいロールモデルは232026 JUL. Vol.459地域に根ざし、未来を織りなす仕事
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