まさか自分が、おむすび屋さんの店主になるとは。もともと総合病院で看護師として働いており、集中治療室などの最前線でキャリアを積むポジションにいました。このまま一生病院で働き続けるものだと、信じて疑わなかった。そんな私に転機が訪れたのが、長女の出産でした。長女は重度のアレルギーをもって生まれ、1日3回お風呂に入れて薬を塗り、包帯を巻き直すという生活が続きました。その間、家の外とのつながりはどんどん途絶えていく。ふと思い出したのが、病院で働いていたころに出会ったおじいちゃんのこと。退院が決まったのに「家に帰っても一人だから」と嘘をついて退院を渋るのです。長女のケアで家から出られない日々を送り「ああ、あのときのおじいちゃんはこういう気持ちだったのかな」と、身をもって社会的孤立を実感しました。なかなか見えないだけで、地域には「つながり」を求めている人が、きっとたくさんいる。その人たちが、安心して一緒にご飯を食べられる場所があればいいのにと味わった「社会的孤立」地域をつなぐ食堂を構想大阪府生まれ。総合病院で看護師として勤務後、自身の社会的孤立の経験を機に、2017年に地域食堂「おかえり処 おむすびころりん」をオープン(店主は母)。その後コミュニティナースを知り、2021年に自身の店として「おむすびスタンド むすんで、にぎって。」を開業。株式会社日和舎代表。 2026 JUL. Vol.45949取材・文/塚田智恵美 撮影/稲山智紀 教育業界でも注目されるアントレプレナーシップ(起業家精神)。この連載では、全国さまざまな地域の未来に向けて取り組むアントレプレナーの方々を取材し、何かを変える一歩目の踏み出し方、高校教育にも通じるアントレプレナーの視点を探ります。
元のページ ../index.html#49